さる2月24日、厚生省班会議の公開合同シンポジウムが開催されました。内容的にはかなり難しいものですが、今後の骨髄バンクの展望とも関係してくる問題ですので、多少専門的ではありますが、概要を記載いたします。発表者の発言から、できるだけ専門用語は使用しないように多少編集者が書き換を致しました。またテープの録音状況が一部不明瞭で、正確に聞き取れないところがあり、一部、不正確な部分があるかもしれません。発表内容と事実が異なっていた場合は、申し訳ございませんが、ご指摘下さい。次回会報で訂正させていただきます。(以下 敬称略) 開会の挨拶          白井 祐二  厚生省の白井でございます。本日はお忙しい中、骨髄移植調査研究の公開シンポジウムにおいで頂きまして、まことにありがとうございます。本研究も今年で4年目を迎えております。日本骨髄バンクが発足するのに連動して、その研究的な意義を負担するという意味で、この研究班は発足しております。その中に、細胞の問題とか、HLAの問題とか非常に治療成績に影響のおきます問題に関しまして、第一線の先生方に研究をしていただいるわけでございます。近年、非常に骨髄移植の症例が増えて参りましたので、これを公開にしていただきたいという方々が増えてきましたので、昨年度より公開シンポジウムという形式を取らせていただいております。本年度は研究班の成果といたしまして、骨髄移植における事業にDNAタイピング導入ということがありました。2次、3次の検査にDNAタイピングをすすめているところでございます。また、本年度より保健点数の改正により、自己骨髄移植、及び自己末梢血幹細胞の移植が点数化されたことにより、多くの自己骨髄移植、自己末梢血幹細胞移植が行われ、その専門家の先生もいらっしゃいますので、それらの様々な問題に関しまして厚生省といたしましては研究班を作り、先生方のご意見を拝聴させていただきながら決定していくという事でございます。日本骨髄バンクも93年には83例、昨年には183例とドナーの数も6万人を越えて参りまして、非常に症例数が多くなって参りました。来年度からはいままであまり明確でなかった無菌室整備に関しまして、積極的に取り組んでいきます。ただ非常に現在の財政状況が厳しい折りでございますので、来年度に関しても、ある程度の制約がでてくると思われれますので、優先順位の高いものから順次施行していきたいと思っております。  これからも研究をますます発展させ、骨髄移植、非血縁の骨髄移植の成績が向上しますよう、願っております。 造血幹細胞移植の新たな展開         司会 浅野 茂隆  骨髄移植の研究班は、HLA・移植免疫応答に関連した研究班と、造血幹細胞(*1)に関する研究班の2班に分かれております。この2つが骨髄移植・造血幹細胞移植におけるもっとも大きなテーマで、そういう問題を解決していくことが、これからの骨髄移植を大きく発展させ、患者さんの骨髄移植の成績向上につながる事と思います。今後、これからどのような期待がもてるのか、是非拝聴したいと思います。  最初は造血幹細胞に関する研究から始めたいと思います。  この班のもっているテーマは、骨髄移植は、永久的に分化(*2)増殖する造血幹細胞を入れることですが、その際に様々な問題があります。ドナーと患者の日程をあわさなければいけない、骨髄採取は全身麻酔をしなければとれない、などあります。どうしたらドナーの負担を減らせるのか、どうしたら患者さんの治療成績を向上させることが出来るのか、を考えるのがこの班でございます。  そのためにどうしたら幹細胞を増やすことができるのか、どうしたら旨く凍結してとっておくことができるのか、それらの研究が、いまどうなっているのかをここで皆様に御批評して頂きたいと思います。 造血幹細胞増幅のアプローチ            須田 年生  幹細胞を分化させないで増幅することができれば骨髄移植の適応がもっと広がると思われます。我々は幹細胞を自己複製する因子があるのかないのか、あるとすればどのような効果があるのかを研究しております。  はじめに、幹細胞は本当に自己複製するのか? この自己複製という現象を厳密に証明した仕事はなくて、一方では幹細胞も年をとるのであるという説があります。これは幹細胞が少しづつ分化して、最終的に成熟細胞になっていく、この少しづつの分化の間では十分に骨髄機能を維持するような幹細胞、あるいは前駆細胞を生み出していくという考え方であります。  つい最近もカナダの人が、胎生期の幹細胞と成人の幹細胞の染色体の長さを調べますと、染色体というのは複製のたびに短くなっていくのですが、胎生期のもののほうが長くて、成人の染色体は明らかに短いことから、幹細胞は年をとっていくという説をとりました。しかし、この分画は、もし十分に造血能力があるとしますと、我々としましては厳密な自己複製があるなしに関わらず、ここの分画を増やすような方法を探せばいいということになります。  われわれは表面抗原(*3)から、幹細胞の分画を決め、それをとりだしました。放射線を当てたマウスに他のマウスから取ってきた幹細胞を移植し、25週目に幹細胞移植が成功しているかどうかを検討しました。100個の幹細胞をいれて20週目に末梢血を調べますと、T細胞(*4)やB細胞(*4)などすべての種類のドナー由来の白血球が増えていて、100個でも十分長期間の造血が維持されることが分かりました。これは、自己複製によるものか、少しづつ老化しながら分化しているのかは明かではありませんが、少しの幹細胞で長期間造血が維持されることが証明されました。  もう一方、われわれは東北大学の他の研究グループとの共同研究で、リンパ球への細胞増殖に関係しているある因子の受容体の遺伝子を破壊すると、T細胞B細胞の増殖抑制が来ることが予想されます。事実、マウスのリンパ球は通常末梢血の約 30%ありますが、それが著減することが分かりました。骨髄でもリンパ球はほとんどみられない。ただ詳しく調べますと、ごく一部のリンパ球が残存していることがわかりました。そこで次に調べたのは、リンパ球に分化出来ないときに、幹細胞はどうなっているのかということですが、骨髄では大差はなく、脾臓の大きさも変わりませんが、幹細胞の分画が20倍くらい増えていることが分かりました。脾臓の細胞をとってきて、コロニーアッセイ(*5)という方法で前駆細胞の数を調べてみますと、通常のマウスに比べて約20倍増えていることがわかりました。つまり、幹細胞に対してリンパ球に分化する因子が働かないため、顆粒球への分化は正常でも、リンパ球には分化できずに、自己複製能が上がっているのではないかと考えられます。こうしたモデルも今後検討して、なぜ造血幹細胞が増えているのか、生体内では幹細胞が自己複製する機構があるのではないかということが、次の研究のきっかけになるのではないかと思います。これと似た研究は他にもあり、同様に脾臓での髄外造血(*6)が盛んになったとの報告があります。他にも赤血球系での同じ様な報告も多くあります。  これらの研究で、リンパ球系の増殖は傷害されているけれども、骨髄球系の傷害は受けていないため、いままで分かっている受容体(*7)以外の受容体がある可能性がある。  我々は、それ以外の受容体を探そうというわけで、幹細胞分画から、今まで分かっている受容体に類似した形の受容体を探しますと、何種類か見つかりました。同様のことを巨核球への分化もします人の白血病細胞を用いて検査しますと、何種類の類似したものが見つかりました。その中で新しいものに注目してその発現を検索しました。  最初のものは、他の既存の増殖因子受容体と30%の相同性がありました。(この受容体の性格を詳しく検討していますが、あまりにも難しいので割愛させていただきます。)今後はこの受容体に関して詳しく検討をしていきたいと思っております。  今までは可溶性の増殖因子を中心に研究が進められてきましたけれども、強調したいのは骨髄の支持組織の膜から幹細胞に直接刺激が行き、増殖を促す可能性もあるということです。また接着分子も幹細胞の増殖には関与していると思われ、その点も今後検討していきたいと思います。 ヒト多能性造血幹細胞の生体外増殖            中畑 龍俊  ヒトの幹細胞を増殖させ、臨床応用することの報告をさせていただきます。もしこの生体外の増殖が可能になれば、骨髄移植は大幅に変わるわけですけれど、骨髄移植とはこの造血幹細胞の移植そのものにつきるわけです。そうなれば、ドナーの負担軽減という、この研究班のもっとも求められているテーマも実現できるわけです。最終的には現在行われている輸血もすべて幹細胞から作った製剤にかえることも考えております。現在、造血幹細胞から最終的な血球にいたる過程はかなり分かってきまして、その中間段階には様々な造血前駆細胞といわれるものがあり、最終的に成熟した血球が作られる。その過程にいろいろな因子が関与して、成熟血球の数を規制しているわけです。もっとも未分化な造血幹細胞に作用する因子というのは、様々なものがありますが、その因子の本質的な作用というのはまだ十分分かっておりません。ここの機構をうまく作動することによって、造血幹細胞を増殖させていこうというわけです。現在幹細胞は自己複製、及び分化する能力を持っているという性質があり、おもに細胞分裂はせずに静止期に存在する。細胞の表面に現れている表面抗原でいうと、CD34(*8)が陽性、CD38(*9)が陰性の細胞が造血幹細胞の性質とかんがえられています。実際このCD34陽性細胞は、ヒトの骨髄にも末梢血にも臍帯血(*10)にも存在していまして、骨髄ですと単核細胞の約1%がCD34陽性細胞ですが、末梢血ですと通常状態では0.01%しか存在しない。臍帯血は骨髄と同じくらい存在する。その中でもさらに幼若なCD34陽性CD38陰性、この分画がおそらくヒトの幹細胞が含まれていると思われますが、この細胞は、骨髄ではCD34陽性細胞の1%〜3%、臍帯血では5%から10%が占めている。CD34陽性細胞だけを集めて顕微鏡で見てみますと、小型のリンパ球みたいな形をしています。CD34陽性細胞のすべてが造血幹細胞であるわけではありません。このCD34陽性細胞を培養しますと、様々な造血前駆細胞から出来た細胞の集まり(コロニー)が出来てきます。赤血球の前駆細胞からは約1万個の赤血球が作られていると言われています。また顆粒球を作る前駆細胞も、巨核球をつくる前駆細胞もこのCD34陽性細胞の分画に含まれています。また、一つの細胞から赤血球系や顆粒球系に分化してコロニーをつくるものもあり、これはより幹細胞に近い細胞だといえます。こういう幹細胞に近いコロニーを増やす技術を開発することによって、ヒトの幹細胞の生体外の増幅というものが可能になると考えます。  私たちは、液性因子だけで幹細胞を増幅きないかと考えているわけですが、現在、この幹細胞の増幅に関与する様々な因子が分かっておりまして、その中でも未分化の細胞に働く因子がどういった働きをしているのかということを見てみますと、大きく分けて3つのグループに分けることができますが、このいずれか一つが共存しないと幹細胞は増殖しないのではないかということが最近考えられるようなりました。  ほとんどの幹細胞は静止期にいるため、増殖期に入れないことには、造血幹細胞は増殖しませんし、大量に増やすことはできません。そのため、静止期にある細胞を細胞回転に入れる因子が必要となる。それから実際に細胞を増殖させ因子がありますし、その両方の作用を持っている因子も分かってきています。  ネズミの実験では、2種類の組み合わせで、コロニーを作る元の細胞が1000倍以上にも増やすことができる。ところが、ヒトではその組み合わではなかなか再現できない。ヒトではせいぜい10倍程度にしか増えない。その要因をいろいろ検索し、最近、いろいろ分かってきました。一つは、受容体の発現の仕方が違うのではないかということ。この増殖に関わる因子を受け取る受容体の発現率が低いため、いくらその因子を投与しても、増殖が起こらないのは当たり前です。そのため、直接因子の受容体がなくても、その因子を別の受容体と結合させてから刺激を与えると増殖が起こるのではないかと考えました。そのことについて実験したところ、予想通り、未分化の細胞が非常に増殖することが分かりました。出来たコロニーを顕微鏡で見ましても、様々な種類の血球からなるコロニーが多数見られ、この組み合わせは、未分化な造血幹細胞を刺激するのに非常にいい組み合わせであることが分かりました。  そこでこのシステムを使って、ヒトの幹細胞を増やせないかと液体培養で検討を行いましたが、無血清の状態で2週間で約千倍〜二千倍に細胞が増えることが分かりました。血清下で2週間たった段階で、造血前駆細胞がどのくらいふえているかということを検討しましたが、二千個のCD34陽性細胞が約4万個まで増えました。CD34陽性細胞には、すでに先ほど述べたように分化した造血前駆細胞がかなりはいっているため、そういった前駆細胞は、さらに新しい前駆細胞を生み出す力はないのです。新しい前駆細胞を生み出すのもの検索をしてみたところ、無血清下(*11)で21日目においても、約100倍まで増幅され、たくさんの前駆細胞が生み出されているということがわかりました。  このように、新しいシステムで現在では臨床応用できるようなレベルまで増幅することができるようになりました。しかし、これには一生骨髄を維持できるような本当に未分化な前駆細胞が増えているかどうかは、現在では調べる手段がないため十分に分かっていません。これにはもっと研究を積まないといけませんが、従来の方法よりは、はるかに未分化の細胞を増やすことができるようになったのです。 司会・浅野  現在では、ドナーと患者は同じ日に採取、移植をしなければいけない。これは患者やドナーにとっても非常に大変なことであり、別の日にとって保存しておけないか、先ほどの増幅するのもそうですが、現在の状態で、都合のいい日にお互いが出来ないか、これができればいまの骨髄移植のシステム、骨髄バンクのシステム(コーディネーションのシステム)を全く変えることができる。この事に関して、造血幹細胞の凍結保存とバンキングという事について話していただきます。 造血幹細胞の凍結保存とバンキング            関口 定美  バンキングというのは、凍結の技術だけでなく、適切なものが蓄えられ、それを平等に分配できるということ、またバンキングされているものは、均一のものでなければならない。以上のことを考えて、研究をしております。  幹細胞は、骨髄、末梢血、臍帯血とあり、それぞれ長短があります。骨髄はもっとも早くからバンクとして出来たわけですが、現在の骨髄バンクは、バンクという名がついていますが、あくまでドナープールであって、正確な意味でのバンクではありません。そういういみでは、バンキングとなると、末梢血か臍帯血となります。末梢血においては保存に関してある程度なされており、これは末梢血幹細胞移植はほとんど自家骨髄移植で行われているからです。同種となると、G−CSF(白血球増殖因子)投与の是非の問題があり、まだ症例数がすくないのが現状です。もっともバンキングに位置しているのは臍帯血であります。  PBSCの採取は通常血小板ドナーからの採取とほとんど変わりありません。だいたい日本で成分献血のドナーは、毎年120万人の方が協力して下さっています。北海道では血小板の供給は70%が一人のドナーから供給されています。手技的には末梢血幹細胞移植と同じことを行っているわけです。そういうことからわれわれの技術を移植にいかに生かしていくかということを研究しているわけです。  つまり治療の一部を血液センターで行って、その大事な末梢血幹細胞を血液センターで凍結して患者さんに移植されると言う行為が十分に患者さんに理解されていないと、「なぜ血液センターなのだ?」という事になりますので、このことについて、十分に理解を得る。登録していただきますと、必要なデータが血液センターに来ます。化学療法あるいはG−CSFを使ったあと、必要なときに患者さんは血液センターに来ていただいて採取をする。その採取した材料で、CD34等を測定する。その情報を医師に報告し、適当かどうかを判断する。最終的に何回かに分けて凍結してあった幹細胞を融解して使用するというフローチャートです。  凍結の手順は、コンピューター制御の凍結装置を用いて徐々に温度を下げていることが他のセンターとは違うことです。問題の凍結細胞の浮遊液組成(そのまま凍結すると、細胞の中氷の結晶が出来て、細胞が破壊されてしまうことがあり、それを防止する薬)ですが、5%の凍害防止剤と5%の維持液を用いています。  北大の第2内科との協力で凍結細胞での移植を行ったものの解析ですが、いいものもあれば悪いものもあり、様々なことを基準化することにより、実際のバンキングでは、すべてがいい状況で移植されることが望ましいと思われます。  われわれとしましても、いかに臨床に役立っているかということは、血液センターの職員の意欲を高めますので、こういう順調に経過した症例というのは非常に大切であります。  こういうことを頭に入れながら、血液センターの職員は幹細胞の処理にあたります。採取の間、患者を力づけたり、出来るだけ多くの幹細胞を採取出来るように努力しているわけです。問題は凍結保存ですが、今の所、冷却速度のコントロールをする必要があるのか、つまり、簡便法のように、コンピューター制御を用いないで、凍結していい効果を得ているのだからいいのではないかということですが、本当にそれでいいのか。凍害防止剤を入れるわけですが、解凍したあと、洗ったりするのか、ということを解決しなければいけないわけです。凍害防止剤の副作用等の問題。これは今まで血液センターも冷凍赤血球があり、いままでの経験から、これらの問題を解決していきたいと考えています。  簡便法とコンピューター制御での凍結方法を比較して、細胞の回収率を見てみましたが、同じ様なデータでした。最終的には移植してよければいいわけですが、このデータからしても、簡便法でいいということになります。しかし、非常にたくさんの症例を行いますと、いいものと悪いものとが必ず出てきます。バンキングによって、そういうものを提供するとなりますと、ばらつきの高いということは、非常に問題になる。均一のものを求めるとなると、ちょっと考えるところがあります。  冷却方法の違いを保護液の違いで見てみますと、通常、簡便法は凍害防止液の濃度は低く、コンピューター制御の法は濃度が高い。冷却の速度を見てみると、簡便の方は早く温度が下がるので、それがいい影響を与えているのかもしれません。  凍結の際に起こる細胞障害は、凍結時に水分が先に凍ると、細胞内の水分が減り、(電解質が)濃縮され細胞の中の濃度が高くなることと、当然大きな結晶が出来れば、それ自体が細胞を破壊するということです。そのため、コンピューター制御でゆっくりと細胞内の温度を下げていくことがいいといわれてきたわけです。  しかし、幹細胞に関しては非常に特徴的であって、細胞濃度(電解質)等の圧力(浸透圧)がかなり高いところでも、十分に回収されており、幹細胞はそういうものに強いものではないかとおもわれます。また、まったく凍害防止剤を使わなくて凍結しても、4%程度は回収されており、いかに幹細胞は強い細胞であるかということがわかります。しかし、すべての細胞が強いという訳ではありませんので、やはり、最終的に得られたものが均一なものであることが必要であるということになりますと、やはり簡便法で済ませてしまうということは、バンキングとしてはとても問題があると思われます。  凝集に関しては、赤血球製剤では破壊された白血球が引き起こしていることが分かっていますが、おそらく幹細胞においても同じ事が起こっているのではないかと思います。  蛋白分解酵素やDNA分解酵素を入れて見ますと、凝集は起こらなくなりますので、いかに解凍するときに凝集を起こらなくするかが問題となってきます。  凍結に関しては、まだまだ検討が必要であり、均一な幹細胞が得られるように保存を考えていかなければならないと思います。  実際にバンキングのシステムに関しては、完成したものはありませんが、最近ニューヨークで考えられたシステムは、臍帯血を対象としたものですが、様々な種類のシステムがあり、一番いいものを使っていきます。(ニューヨークのシステムの説明が続きました。)  このようにかなりコントロールされたシステムによって、均一な幹細胞を提供できるようになるだろうと思います。 司会・浅野  今回は末梢血に関してお話頂きましたけれど、これは末梢血に限らず、すべてのものに言える事だと思います。いまアメリカではかなり行われているという事もおわかりだと思います。  質問ですが、CD34による分離だけで、解凍時の凝集はさけられませんか? 回答  量の問題になると思いますが、純化すればするほど量は少なくて済みますし、装置も縮小できるでしょうし、保存も大量に出来る。しかし、凍結保存する以上は、凍害防止剤を使用しなくてはいけなくて、この副作用の気持ち悪さというのは、体験したものでしか分からない。できれば、一回きちっと洗って、入れたいいと思います。また回収率をあげることも必要だと思います。 司会・浅野  今回の話では出てきませんでしたが、費用の問題があり、今の方法ではかなり高価なものであるため、その問題も解決しなければいけないと思っています。 同種末梢血幹細胞移植の可能性            原田 実根  自己末梢血幹細胞移植(自己PBSCT)は保険適応が認められてから、急速に普及してきています。まず最初に少量のG−CSFを正常提供者に投与して、どのくらい末梢血に骨髄から造血前駆細胞が動員されるかということを検討しました。  通常の場合、末梢血にはごく少量、造血幹細胞が循環しており、それに極少量のG-CSFを加えると約10倍にふえ、また自己複製があるかなり未分化な幹細胞も増えてくることがわかりました。次に、同種(*12)末梢血幹細胞移植を視野に入れまて、もっと具体的な検討を行いました。  G−CSFを通常量(体重1sあたり5μg)、通常量の2倍(10μg)、3倍の量(15μg)で5日間投与して6日目に末梢血を採取しました。実際に患者さんに投与するわけではありませんので、処理量は5リットルです(*13)。最も白血球が増えたのは2倍投与した人で5日目に7万7千まで増えました。低い人は3万程度でした。大量に投与した人が白血球が多く増えたかというと、そうではありません。つまり個人差がかなりあります。血小板はほとんど増えませんが、一時的に減少した方が9人中3人いました。CD34陽性細胞も時間と量に応じて増えることがわかりましたが、これもかなり個人差があるようです。他の表面抗原についても検討し、時間と量に応じて増えていくことが分かりました。これから、G−CSFの量が増えればそれだけ造血幹細胞の末梢血動員されるということが言えます。これから平均値を出しまして、実際の10リットルの処理量に換算し、2回採取するとして、体重60sの患者に輸注すると仮定しますと、CFU−GM(顆粒球系をつくる前駆細胞の数)で通常量の3倍投与した人で、患者体重1s当たり2.5× 105個、CD34で7.8×106個、2倍投与した人でCFU−GMで1.8×105個、CD34で7.3×106個となっており、現在、同種末梢血幹細胞移植で必要なCD34陽性細胞の量は5×106個(患者1s当たりの数)と言われていますので、2倍量・5日間投与で同種PBSCTに必要な量はとれるだろうということが言えます。また、末梢血幹細胞採取は、単核球として採取しますので、5割近い単球と3割近いT細胞が含まれており、幹細胞移植を行うときに、大量のT細胞が入ってくることを注意しなければいけません。 (編集者注・T細胞は移植後のGVHD(*14)に深く関与している細胞であり、GVHDを減らすために輸注骨髄からT細胞を除去する場合もあります。)  この9人の正常人に対するG−CSFの投与の副作用(*15)は、全身倦怠感が8例、軽い骨痛が3人、強い骨痛が4人起こっています。骨痛に関しては鎮痛剤の投与で軽快しています。一時的に3人が血小板10万以下に減少しました。また検査値の異常は、GOTがごく軽度上昇、LDH、ALPが正常の2〜3倍、CRPが軽度陽性に上昇しました。この値は1週間以内に正常にもどりましたので、やはりG−CSFによるものと思われました。  実は血小板にもG−CSFの受容体があることが分かっていますので、G−CSFを投与後一日後に、血小板の機能をはかってみますと、血小板の機能が上昇しているもがわかりました。  ここで実際に同種PBSCTの症例をお示しいたします。患者さんは46才の男性で、フィラデルフィア染色体陽性の急性リンパ性白血病で初回寛解導入に不成功の症例です。45才の弟から骨髄移植を計画しましたが、ドナーの家族の反対で、全身麻酔の承諾が得られず、同種PBSCTを計画しました。移植前処置は同種骨髄移植と全く同じで、ドナーに対するG−CSFは10μg(通常量の2倍)を6日間投与し、4日目と6日目に末梢血幹細胞を採取しております。しかし、CD34陽性細胞は1.8×106個と目標の1/3しかとれず、逆にT細胞は予想の 10倍以上も入っていました。すでに前処置も入っているので、これを移植しました。16日目に白血球が増えてきまして、血小板も増えました。骨髄でもフィラデルフィア染色体は消失しており、骨髄では寛解をたもちましたが、3カ月頃に白血病が再発してしまいました。白血球の回復は、同種骨髄移植より早めで、T細胞が10倍輸注されたにも関わらず、GVHDは起こっておりません。同種PBSCTは成功しましたが、残念ながら再発で患者さんはお亡くなりになりました。  これまで同種PBSCTの報告は8つありますけれど、いづれも同種骨髄移植の生着不全、白血病の再発に再移植を骨髄移植の代わりに用いられたり、あるいは非常に危険の高い症例にPBSCTを用いています。また末梢血幹細胞を採取するのに用いるG−CSFは少ないもので3μg/s、あるいは一人125μgから報告がありますし、輸注量も患者体重1sあたり、CFU−GMで 7.7〜36.1×105個、CD34で1.8〜8.1×106個とかなり変化に富んでいます。それでも白血球の回復が早いことが報告されています。急性GVHDも思いの外重症のGVHDは起こっていないようです。  学会報告などをあわせると、世界的には同種PBSCTは既に50例以上行われていると思われますが、ほとんどが造血器悪性腫瘍が対象となっており、多くはG−CSFは 10μg/s以上用いているようです。採取したCD34陽性細胞は中央値2.79×106個/sで以外と多くない。これから標準的に言われている5×106個/Kgは妥当な数字であると考えられます。その中で、好中球が500個を越える(*16)中央値は11日目と大変速やかな回復が得られている。血小板2万以上回復が11.5日とこれも大変早い。これは同種骨髄移植ではとてもまねの出来ないものです。問題はGVHDですが、重症のGVHDは24%でありますが、重症化の傾向も認められていませんし、頻度も同種骨髄移植とそれほど変わりはないようです。  同種PBSCTの有利な点を上げてみますと、全身麻酔下の骨髄採取に伴う危険性を回避できる。白血球の回復が早いために重症感染症の危険性を少なくすることが出来る。  これは、全身麻酔を用いての骨髄採取による非血縁のドナーリクルートの骨髄バンクに取って変わりうるものになるのではないかと思います。それによってドナー拡大につながるのではないかと思います。  ヨーロッパのBMTグループでは、既に昨年から同種骨髄移植と同種PBSCTの比較試験を行っており、同種PBCSTが同種骨髄移植と同等の安全性、有効性があると言われており、こういう検討も我々の国でも必要ではないかと思われます。  まだ始まったばかりで分かりませんが、生着不全の問題や、リンパ系まで分化する多能性幹細胞がはたしてG−CSF単独投与で末梢血に動員されてくるのかどうかという問題がありますし、長期的な造血免疫能がまだまだ観察期間が短いので、今後も慎重に検討する必要があります。またGVHD予防のため、どの程度T細胞除去が必要となるのか、今までは起きていませんが、そのことに関しても検討が必要と思われます。  結論として、常用量の2倍のG−CSF単独投与で、健常人では同種PBSCT後の生着に必要な十分量のPBSCを採取することができ、同種PBSCTでは速やかな生着が得られており、予想されたGVHDも頻度の増加や重症化は見られていない。したがって近い将来同種骨髄移植は同種PBSCTにとって代わられるもと思われます。 自家PBSCTデータに基づいた 同種PBSCTの開発研究            高上 洋一  PBSCTにおいては既に自家移植においては通常行われるようになった方法ですが、そこで得られたノウハウや知識を今後同種PBSCTの発展あるいは確立にどういうように応用することができるのかをお話ししたいと思います。  最初に、どのようにして末梢血から取るのか、その理由は何か、あるいは自家PBSCTで得られるデータはどのようなものなのかをお話しし、後半では、健常人から採取した末梢血幹細胞と患者さんから採取した末梢血幹細胞の比較をし、今後同種PBSCTが本当に実現できるのかどうかをお話したいと思います。  いままではPBSCTを行うときに、全身麻酔を必要としない、危険性が低いからと考えていたわけですけれども、いまやもう一歩踏み込んで、末梢血から幹細胞をとるのは、骨髄から取るより、幹細胞の質がいいからだという考えかたがこれから出てくると思います。  もう一度整理いたしますと、移植術には、自家移植、これは患者さん本人から幹細胞をとる場合と、同種移植、他の人から取る場合とあり、いずれにしろ幹細胞を取らなければいけない。骨髄の幹細胞は体中のいろいろな骨の骨髄で作られていまして、6カ月くらいの赤ちゃんですと、長管骨といって、長い骨で作られていますが、成人では主に腸骨、胸骨から全身麻酔で採取します。ところが、全身には残りの部分がたくさん造血している部分があり、こういうところからもたくさん取ってくると言うのがPBSCTなのです。骨髄を取るためには、たくさんの箇所から採取しなければいけないということが問題となってきますが、骨髄中では造血幹細胞は、ストローマ(支持細胞)という骨髄の細胞に抱かれるようにして育っており、分化増殖を行って、成熟した細胞だけが末梢血に流れてきます。ところが化学療法を行って造血細胞が刺激された場合、または、G−CSFを投与して骨髄が刺激された場合は、未熟な細胞も末梢血中に流れてくる。幸い最近は様々な造血幹細胞を採取する機械が、これはもともとは血小板や白血球を採取、または血漿交換をするために作られた機械ですが、この機械が非常に末梢血から幹細胞を効率よく採取することができることが分かってきた。  だいたい2時間半から3時間を2回行うだけで、骨髄移植に必要な幹細胞の数倍から十数倍の量の幹細胞がとれる。小児の場合はちょっと難しいのですが、成人の場合は、いま血液センターが行っているのと同じ方法で採取が可能です。  採取した幹細胞は冷凍保存しておきます。このような方法で、最近は自家骨髄移植から自家末梢血幹細胞移植に世界的にも変わってきている。造血因子を使用すると末梢血幹細胞の採取が非常に簡単になるということです。  2番目の特徴としては、移植した後の白血球、血小板の回復が非常に早いということです。患者さん自身のデータでいえば、移植後白血球の回復は1週間から10日間。そのため、移植後の無菌管理が絶対不可欠という訳ではなくなってきました。  次にここで得られたノウハウ、知識を、末梢血幹細胞移植にどのように展開していくかということについてお話いたします。  末梢血幹細胞採取は麻酔を用いずに、非浸襲的にドナーから幹細胞がとれる利点がある。いままで我々は骨髄の幹細胞の方がいいに決まっていると思っていましたが、末梢血の幹細胞と骨髄の幹細胞との特徴を比べてみると、移植する細胞にしても末梢血の方が優れている可能性が今後出てくると思われます。ただ、同種の末梢血幹細胞を行う上で問題となるのは、正常のドナーの方に造血刺激因子を投与しなければいけないという問題。もうひとつ、リンパ球(T細胞)が大変たくさん混じってくる。これをどう扱うかという問題。特にわれわれは、今後非血縁のバンクの中で、どのように末梢血幹細胞移植を行っていくかということを考えているため、重症のGVHDが多発することはやはり避けなければいけない。ということで、T細胞をどのように除去したらいいのかというシステムを構築していく必要があると考えています。  自家末梢血幹細胞移植のデータに戻りますけれど、移植した後に、顆粒球が500以上に戻るまでに何日かかったかということを輸注した幹細胞の量で比較してみたところ、CFU−GM、あるいはCD34陽性細胞の数で、相関を認めた。つまり、ある程度の量を入れると、どのくらいで回復してくるかという事が推測できる。これを使って同種の移植術をある程度可能かどうかということが推察することができる。その結果については、原田先生が示されたとおり、同種においても、自家と同じ様な結果が得られている。  正常人には化学療法を行って幹細胞を採取するわけにはいきません。自己末梢血幹細胞であれは、化学療法を行ってからG−CSFを投与しますが、正常のヒトには、G−CSF単独で投与して幹細胞を取らなければいけない。その分、自家末梢血幹細胞採取より、幹細胞のとれ方が少ない可能性もある。  もうひとつT細胞を非血縁で使用する場合はT細胞をのぞかなければならない。これを逆に考えますと、CD34陽性細胞を取ってくる。通常、採取した末梢血のうち約70%はリンパ球で20%は単球、残りは顆粒球ですが、幹細胞の分画は非常に少ないのです。そのため、多いものを除くというより、少ないものを純化するということの方が簡単に行えます。回収率も50〜60%となっています。そのため、7×106個/sのCD34陽性細胞を取ってきて、純化して最後に4×106個くらいのCD34陽性細胞が残れば、移植は可能となります。  患者に化学療法とG−CSFを用いた場合と、正常人にG−CSF単独で用いた場合にとれる幹細胞を培養してどのような造血幹細胞が増えてくるのかを調べてみました。患者からとってきた細胞で、CFU−GMに関してはほとんど変わりがない。同じように培養してみて白血球がどれくらい増えてくるのかを見てみると、患者さんのデータと正常人のデータはほとんど変わらない。一つ言えることは、同種のPBSCTを目指して幹細胞を取った場合も、いままで患者さんで取ったデータもほとんど同じものであると言えると思います。健常人にG−CSFを投与すると、とれる幹細胞はかなり大量にとれる。移植の場合も同種の場合も末梢血の幹細胞の方が優れている可能性が明かであると思われます。 司会・浅野  PBSCTの新しい展開として、同種の移植にどのような可能性があるかということでお話しいただきましたが、これからの展開も含めて、何かご質問があればお受けしたいと思います。 十字  G−CSFを健康人に投与することが、本当に安全なのか。例えば非常に小さい腫瘍が隠れていて、G−CSFを投与することによって腫瘍が増大してしまうのではないか、そういうことが、やっぱり我々にとって倫理的な責任としてどこまで、どんなことがクリアされたら可能なのかということについて両先生はどう思われますか?ご意見を伺いえたら。 高上  まず、私の方からなんですけれども、あの、スライドの中でも私も述べさせて頂きましたように、その問題がやはりり一番大きい問題だと思います。ただ、極端に言ってみると今まで動物実験いろいろやってみて、言える事は今までのところあまり著明な問題は出ていない。ところがやっぱりどんな問題が出てくるかは、正常な方に投与してみるしかないと思います。実際、、一部の腫瘍等では、先来、ご承知のようにG−CSFを商品化する前に毒性テストの中で、全てテストされてる。だからこそ厚生省が認めて、市販薬として今売られている訳です。但し、先程私が言ったのは、ドナーにご説明して、二つのリスクを選んで頂くしか仕方無い。一つは、全身麻酔をして骨髄を採るリスクと、このG−CSFのリスク。どんな薬でも、とにかく薬を外から体に投与する限り、リスクがないとは我々絶対に言えないと思います。じゃあどれ位、可能性があるのかと言うことは実際には、投与してみて、データーを蓄積してみるしかしょうがない、と言うしか正直なところ私は、言いようがない。 高久  G−CSFはもともと血液中に少量流れているのですから、5日間投与したから、急に腫瘍が増えるという可能性は非常に低いのではないかと思っています。ただ、一番気になりますのは、副作用の事で、骨痛とか、疲労とかいうことは、ドナーの方には覚悟して頂くにしても、気分不快や疲労が90%位の割合で出るのが、一番気になるところで、最初の十字先生のご指摘はあまり心配ない。 質問  Gのもう一つの副作用というより、非血縁のPBSCTを行なう場合、どれだけ急性GVHDが起こるか、起こらないかを評価するにはどのような方法がありますか? 司会・浅野  同種PBSCTをどう展開するかは、この班の大きなテーマでございます。高久先生のご指摘の通り、それをどの様に克服するかが大事であり、それと今、ご指摘の通り、PBSCTの急性GVHDの問題は今だに、残って居ります。そういうことを含めて考えていかなければいけないと思います。正常人に薬を投与する場合、いかに少なくするか、副作用をいかに少なくするか、が大事です。しかし高上先生が言われたことも非常に重要でありまして、私もまた、後でまとめようと思って居りますけれども、この部分をクリアする為に一つのスタディーが必要になってくる。という事はどうして必要なのか?それはよくコントロールされたスタディです。それは、原田先生が最後にスライドでご示しになった通りなんですね。そういう所をよくコントロールしたスタディを組まなくちゃいけない段階にある。それしかG−CSFに関しては、十字先生が言ったように、長期間でみた場合どういう影響があるかというのは、たとえ薬物学的量であるわけですから、その場合正常な私どもの体の中には10ピコグラムが流れているが、それ以上のものを投与するわけですから、その扁のところの心配はあるけれど、コントロールしたスタディーであればしなくてはいけない。それから高上先生が誇張表現したかもしれませんが、幹細胞の研究というのは、まだ1年2年の段階ですから、まだ分からない問題がたくさんある。それもクリアしていかなければならない。 質問  原田先生は血縁でお示しされたと思うのですが、非血縁の場合、血縁と違ってかなり強いGVHDが起こるということは、たとえば動物のモデルとかそういった形で検証することは出来ないのでしょうか? 原田  たぶん予想されることは、血縁の骨髄移植に比べて、非血縁の骨髄移植はGVHDは増えましたし、重症化傾向もはっきり出ていますので、それと同じ事がいえるだろうと思います。それとHLAのDNAタイピングがどんどん進んでいって、クラスTまでDNAでタイピングする技術が出来てくれば、もっと減るだろうと、もうひとつ、HLAが完全に一致していても、血縁で2割くらいGVHDが起こるのですね。その場合の標的抗原はたぶんマイナーな組織適合性抗原であろう、それはまだ分かっていない。そういうのがわかってくると、それをあわせていくということも考えられる。  しかし、HLAをかなりDNAレベルで完全に一致させたドナー・患者のペアであれば、いまの血縁骨髄移植よりもGVHDが増えるという覚悟があれば、実現可能ではないかと思われます。 関口  血液センターの関与について今話し合ったんで、別の面から、ここでちょっと話して頂かないと解らないと、思いますので・・・。  実は、骨髄バンクができる時に、血液センターではHLAマッチのドナープールがある。これは、非常にバンクについて基礎となるんじゃないかと言うことで、かなりいろんな働きかけがあったんです。その時に血液センターの考え方は、血小板輸血においては、リフラクトリーのケースがどうしてもHLAマッチのドナーが必要で、その為にドナープールというものを造っていくかと言う事があったんです。それが、ここ数年で、非常に状況が変わって来たんです。と言うのは、一つは、非常に先程から言っているように、シングル・ドナー血小板の輸血が、普通になった。それから、フィルターの使用も普通になった。そう言う事で、 非常に輸血不応性のケースが減ったんですね。それと今までHLAマッチのドナープールというのが、だいたい、14万人あるんですけど、この人たちのプールは使われないで、、非常に維持が難しくなってきた。年に一回とか、2年に一回のフォローアップではとても、ドナーのプールは実際、維持できないわけですね。ですから今ここで、同種のPBSCのバンクをどうするかと、考えないとですね、せっかく今まで維持してきた14万人のHLAマッチドナープールを今後どうやって生かすかと言うことは、大切な事でないかと思います。ですから、こういう基礎的な考えと同時に、やっぱり供給面であるドナーの組織をどうするかと言うことを同時に考える必要があると思います。 浅野  関口先生が、お話になった事でだいたい、この私どもの班の研究がどのような関連で結びついているかと言うことが、よくお解りになったと思います。一つ私が加えておきたい事は、先程のG−CSFの問題ございましたけれども、実はもっと少なくするべきじゃないかとか。その時に活きてくるのは、最初の基礎的な試験管内での研究でございます。他の因子を更に加えたら、G−CSFの副作用を失くせるのかとか、もっと効率よくレベルの高い、質の高い幹細胞がとれるのかどうかと。そういう研究は私どもが、基礎的に積んでいかなくちゃいけないと、同時に進んでいかなくちゃいけない。一方でコントロール・スタディをやりながら、そちらの方も進めていかなくちゃいけないと思っています。 HLAのDNAタイピング         司会 笹月 健彦  骨髄移植には拒絶反応と同時にGVHDという反応があります。とくにGVHDは致命的な事項ですので、このGVHDにどのようにHLAが関わるのか、つまりHLAのマッチング、ミスマッチとGVHDということに関して検討したいと思います。これまではHLAは血清学的にタイプされてきたわけですけれど、血清学的には分けることのできないサブタイプというのがあることが最近わかってきました。そのサブタイプはDNAタイピング、俗な言い方をすれば、HLAの遺伝子タイピングでそのサブタイプを分けることができます。まず、DNAによるHLAのタイピングということを検討し、その後、骨髄移植におけるDNAレベルによるマッチングがどのようにGVHDに影響を及ぼすかということを討論したいと思います。  最初に、HLAのクラス1の遺伝子解析をお願いいたします。 HLAクラスT 遺伝子の解析      徳永 勝士・十字 猛夫  今日はクラスTの遺伝子の解析の現状についてご報告させていただきます。私どもがあわせようとするHLAは、機能する遺伝子としては最高度の多形性を有する遺伝子であります。昨年の夏までに公認された遺伝子の数というのは非常に多くあります。特にクラスTの遺伝子の解析というのは、まだ十分に行われておりません。この対立遺伝子の数はこれからまだまだ増えると予想されます。日本人のクラスTの遺伝子の解析もまだ十分に終わっているとは限りません。その現状について、これからご紹介いたしたいと思います。  塩基配列を決定することによって確認されてきた遺伝子ですが、HLA−Aですが、どこの検査室でも簡単に分けられる大分類以外に、貴重な抗血清を用いた精密な分類方法もあります。日常的に細かい分類まで行えるようなことは不可能である。 このスライドは血清学的なデータに基づいて推定されている頻度と、それぞれの血清学的な分類に対応するDNAのタイプが記載されています。その中には、われわれの研究で見いだされたタイプもあります。  注目していただきたいのはA2ですが、頻度は24%と高いものの一つですが、これをDNAレベルでタイピングしますと、01、06、07と少なくとも3つのものが、いずれも高い頻度で存在する。血清学的には区別できないけれども、DNAレベルで初めて区別することができるという訳です。  A2のグループだけを特異的に同定するDNAを設定することが出来まして、直接A2の配列を決定することが出来るようになりました。その中で、07というタイプは、血清学的にA2、B46、C1、DR8.1という表現系を伴う場合が多いことが分かりました。  HLA−Bの遺伝子の多様性ですが、ここで血清学的には細分類されないものがあることが分かりました。B15関連として62、75といったものがあり、それに対応するDNAはV1、V2、V3とあります。B40のグループは61は頻度も高いのですが、DNAタイピングでは02、03、06、と3種類がある程度の頻度です。今回の骨髄移植のミスマッチのペアの大部分を占めているのです。  HLA−Cに関しては、種類も少ないので、あまり解析も進んでおりません。Cw7で2種類のものが分かりましたが、いままでに報告のない配列です。  A11は、01、02がありますが、両者の配列はアミノ酸レベルで、たった1点、19番目のアミノ酸が違うだけです。立体構造で見てみますと、19番目は割と表面に位置しますのでこれは、DNAレベルではなく、血清学的なレベルでも分けることができる。同じ様な例がA26の配列で、01、02に関しては、116番目のアミノ酸だけが違う。立体構造のモデルで見ますと、抗原を挟み込む底の部分に当たります。そのため、その部分にHLAの抗血清が入り込むことは考えられない。そのため間に挟まった後の立体構造の変化を抗血清は区別していると考えられます。  ただアミノ酸1個の違いと抗血清で見分けられるかというと、そうではなく、たとえばB40のグループ、特にB61はアミノ酸配列の比較をしていますと、多くの違いがありますが、今の所抗血清できれいに見分けられる証拠は見分けられません。  塩基配列に関することは、この扁にして、HLA−B座に注目して述べたいと思います。  最初は大まかに2つに分類して、その後こまかく分類するという方法を採っています。たとえばB44は、02、03ありまして、比較的簡単に分けられる。この2つの違いはたったアミノ酸1個です。B22関連で 54、55、56と言うグループは、55はDNAレベルで55.1、55.2と分かれます。まだ塩基配列が決定されていないため、仮の名前で呼ばれています。B15関連がもっとも数が多いものです。 B13では、、日本人で01、02とあります。これを地域分布で見てみますと、ヨーロッパでは02しか見られていません。  B61では02、03、06の3種類が日本人ではみつかっていますが、韓国人などでは02と06だけ、ヨーロッパ人では02だけが報告されています。スペイン人の一部では、全員06という民族もあります。 HLAクラスTのDNA解析            木村 彰彦  HLAは6番目の染色体に存在し、大きな特徴としては、非常に似通った遺伝子がたくさん存在します。その中には機能していないものもありますが、そういうものも含めて遺伝子がよく似たものがたくさん存在すします。もう一つの特徴は一つ一つの遺伝子が、非常な多様性を示している。その多様性の主体というのは蛋白をコードしている、それはいまのDNAタイピングがターゲットとしているものですが、それ以外にも多様性は存在する。  このコードしている領域の多様性というのは非常にたくさんありまして、先ほどの徳永先生の報告のように、DRB1遺伝子は1994年現在106個の遺伝子が存在することが分かっています。これ以外にもまだ未公認のがいくつか存在します。  B15とB46の違いは一定の長さのブロックとしての違いしかない。この違っている部分と全く同じ部分がHLA−Cの中にあります。つまり、このB15とB46の違いの部分は、何からの理由で遺伝子がCから取り込まれてしまったことによるものであろうと想像されます。全く同様のことがB55とB54の違いにも言えます。したがって、多様性は、単に変異によってアミノ酸が変わったというだけではなくこのような遺伝子変換という現症も加わってきていることが推定されます。もう一つの特徴として、HLAの遺伝子の非常に強い連鎖傾向(*17)があます。 日本人によく見られるA24、B52、DR2というタイプの場合、Aは 2402、Bは5201、DRB1は1502、DQB1は0601というタイプを持っています。しかしすべての人がこのタイプを持っているわけではなく、たとえばDRとDQの遺伝子は近くに存在しており、非常に強い連鎖傾向があるので、DRB1とDQB1は少なくとも日本人で見るかぎり 100%の関連があります。そこから距離が離れるにしたがって連鎖傾向の強さは弱くなってきます。  以上のことをまとめますと、HLAは非常にたくさん似たような性質があり、マルチ遺伝子ファミリーを形成しています。そしてそれぞれの遺伝子が多形性を持っており、その多形性の多くはある一部のブロックの中に存在します。その多形性というのは、遺伝子変換というメカニズムによって作られます。3つ目の特徴としては、連鎖傾向の存在です。この連鎖傾向はそれぞれの遺伝子によって特徴的なものが存在します。  これまでにHLAのDNAタイピングはふつうに行われるようになりました。最初はクラスUの遺伝子のDNAタイピングであり、これは一カ所の一部の部分(エクソン)が多形性を示すため、この部分を調べることによりタイピングが可能でありましたが、クラスTの遺伝子は2カ所の部分(エクソン2とエクソン3)が多形性を示すため、問題となってくるのは多形性を示す部分(エクソン)をいかに増やしてくるのかということになります。我々はいま、この部分を特異的に増幅するものを用いて、調べています。  HLA−Aについて、多形性の示す高いほう(エクソン2)を先に解析しようと考えました。このHLA遺伝子は、似たような部分がたくさんありますので、たとえば、ある部分を増幅しようとしても、非常に似通った別の部分を増幅してしまうことがあります。  それを避けるために、A遺伝子にしか存在しない部分を用いて増幅を行ったのです。  しかし、それでも違いが出てこないものがあり、おそらく全く似通った部分が別に存在するのではないかと考えました。実際しらべてみると、まったく同じ様な(機能していない)遺伝子が別に存在しました。これでは遺伝子解析はできませんので、もっと別な方法を用いなければいけない。2つの部分(エクソン2、エクソン3)を同時に増幅できるようなものを用いなければならない。  それを使って増幅しましと、特異的なものが得られた。それからアミノ酸配列を調べると、多くの相違点が見られた。しかし、すべてのものを同定できるものを設定すると、 84種類ものものを作らなければいけない。しかし逆に言えばこの84種類を使えばすべての遺伝子が同定できる訳です。これで実際行ってみますと、いままで分かっているもの以外にもたくさんの遺伝子が存在することが分かってきた。  もう一つ大事なことは、これまで報告されてきた遺伝子配列は誤りであったことが分かりました。この方法で、同じA2でもたくさんの対立遺伝子が存在することが分かった。  このA2の遺伝子の違いを見てみますと、アミノ酸で1個か2個しか違わない。しかし血清学的みてA2という遺伝子も14種類もの遺伝子が存在するということになります。 これは世界中の人種に対してですが、日本人ではA2は5種類があり、その中でも0201、0206、0207の3つの頻度が比較的高いということがいえます。  日本人内でA2の内訳は、0201が約半分、3割が0206、2割くらいが0207で、残りは0210であることが分かりました。アメリカのグループでA2を持っている場合の内訳は、ほぼ100%が0201であることが分かります。また黒人では0202を持っており、0202は他の民族ではほとんど持っていない。北米では 0203というタイプが存在するが日本人にはなく、0210は日本人にしか存在しない。また両方に存在しないタイプも0204、0217は南アメリカの原住民に見つかっている。つまり民族集団毎に異なったHLA−A2のグループが存在することが分かりました。  HLA−Bに関しても、同様の事が言えます。(省略) 質問 タイピングの正確さは? 回答1  基本的な目的が違いまして、私たちははじめに血清学的なデータがあって、それをさらに細かく分類する、しかも、毎日に検査の中で比較的少数の検体を少しずつタイピングできるということをねらっています。その正確性に関しては、希なケースをあまり意識しないで行ったのですが、かなり他の部分との関連がかなりきれいに出ており、その意味ではかなりの正確なものではいないかと思っています。 回答2  100%といいたいのですけれど、技術的に0.5%程度は技術的にミスがでるだろう。技術的というと増幅の過程でおこるもので、実際的には100%であろうと思われます。 骨髄移植とHLAのDNAタイピング            笹月 健彦  これらのDNAタイピングを用いて、実際いままでに行われた骨髄移植で昨年100組、今年度140組を解析いたしました。その結果をご報告いたします。  これらの240組は血清学的にはHLA−A、B、DRが完全に一致しています。MLCは昨年までは強い反応はみられていません。240組のDNAタイピングを5つの施設において、同じ検体をタイピングしました。実際のデータの解析は日赤で行いました。非血縁のマッチング、ミスマッチが予後に影響するかを4つの事項について解析をしました。  まずどの程度血清学的に一致しているか、HLAのABDR以外の部分を検索しました。  DNAレベルでのミスマッチ。ミスマッチとMLCとの関係。最終的に骨髄移植の予後との関わりが調査の対象です。  いままでの239組(1組はHLA−Aがタイピングできなかった)を調べて、諸外国の数千という組み合わせと比べれば比較になりませんが、今後どの様に考えていったらいいかというヒントは得られるのではないかと思います。  血清学的にタイプしなかったDQローカスを見ますとすでに11%が一致しない。DNAレベルでみますと、A、DR、DQ、DPを解析した結果すべてに一致したのは23.1%と1/4しか一致していないという結果でした。  実際のミスマッチは26.1%、DPの半分は一致していない。DRB1は17.9%、DQは10〜20%のミスマッチが認められました。  さらに詳細に見てみますと、血清学的に完全一致の中で一つのミスマッチも無かったのは239組中57組(23.8%)はDNAレベルでの完全一致。Aだけ違ったのは7%。DPは36%となり、それぞれに解析をしました。  HLAのマッチングとMLC(*18)との関わりに関しては、縦軸に反応性を取り、25以下はMLC陰性と解釈すると、横軸にDNAレベルでの完全一致をとりますと、ほとんどMLCは起こりません。DNAレベルで完全一致していれば、MLCは陰性です。クラスTであるAだけが違う組み合わせでは、MLC反応はほとんど陰性でした。クラスUに関して、DPの違いは、大部分はMLC反応は起こらない。DRが違っているとMLC反応は起こってきます。DRが違うと、MLC反応が低いように見えても、U度以上のGVHDが起こっているものが多い。数が少ないので、決定的なことは言えないのですが、DNAレベルでの違いとMLC、GVHDの発生に関してある程度のヒントが分かるのではないかと思います。それからこれも数が少ないので、決定的なことは言えませんが、DPが異なった場合も多くの場合はMLCは陰性ですが、DPだけが違ってMLCが陽性のものは、予後が悪いと言えるかもしれない。  まとめますとミスマッチが全くない組み合わせではMLCが25%以上あるものは3%しかない。Aだけのミスマッチでも強いMLC反応の起こるものは少ない。しかしクラスUの違いはMLC反応が強く、DRが違っているのはやはり強い。DNAタイピング、クラスT、クラスUの差、MLCにおけるDRの重要性が確認できたということです。  おなじDNAのミスマッチでも、クラスUの違いを詳細に見てみますと、DR、DQ、DPでミスマッチがないもののMLC、DPでミスマッチがあるもの、DRでミスマッチがあるものを見てみますと、やはりDRのMLCにおける寄与というものが再確認できたということです。  結局DNAタイピングでMLC反応が予想できるかと言う疑問に関して、クラスUが一致していれば、強いMLCは起こらない。ただし、クラスUが不一致でもMLCが起こらない例がある。しかし、これは生物学的レベル、免疫学的レベルで起こらないのか、それとも何らかの理由で反応が障害されているのかどうか分かりません。  今回見た組み合わせはHLA−A、B、DRが一致した組み合わせですが、逆にDRが一致していないときのMLC反応はどうかという事に関しては、今回十分な検体がそろっていないので、今年度はそのところを解析していきたいと思っています。  最後に問題の骨髄移植とDNAレベルでのマッチングとの関係がどうかということをご紹介いたします。  GVHDがT度以下のグループと、U度以上のグループに分けて検討しますと、DNAレベルでの不一致が全くなかった56組のうち、GVHDがT度以下は60%、U度以上が 40%、AやDRが違っていると、その割合がおおよそ45対55となる。ミスマッチが増えると、より重症のGVHDが出てくるということが言えると思います。どのローカスがGVHDに関係しているかは、今回の解析でははっきりしませんでした。  欧米では数千のレベルで解析されていますのでこれだけの数ではあまり決定的なことは言えませんが、今後なんらかの情報を示していると重います。  Aだけのミスマッチの重症のGVHDは一致の場合の40%に比べて 55%と上昇します。DR、DQのミスマッチは55%のGVHDが認められます。HLA−Bのタイピングの結果は、Bのミスマッチの無かった29組と、あった19組に関してGVHDが2度以上のGVDが起こったものを比較すると、不一致の方が85%U度以上の重症のGVHDが起こっています。一致しているものは30%と、Bにおいてもマッチングが大切であることが分かりました。これも数を増やして解析しなければいけないと思います。  Bにミスマッチの無かった例は生存率がいいが、ミスマッチの症例は予後が悪いとなっています。  結局非血縁の骨髄移植におけるHLAの役割は、血清学的なマッチングではだめで、DNAレベルでのマッチングが予後に確かに有意の好影響を与えていますので、HLAのクラスTからクラスUの完全にすべてのDNAレベルでの情報を得て、すべての塩基配列が必要で、それをもとにしてタイピングの方法を開発しなければいけない。HLAのマッチングとMLCとの関係、HLAのマッチングと予後の関係を解析しなければならない。またMLCがどういうメカニズムで起こるのか、またMLCが生体内で起こるGVHDを代表しうるものなのかという免疫学的な解析も必要となってくるでしょう。 *1 幹細胞  血液の大元の細胞で、この幹細胞から赤血球、白血球、血小板など全ての血液細胞が生まれてきます。この幹細胞には、自己複製といって、いつまでも自分と同じ物を作り続ける働きと、分化して、成熟していくことにより、多くの血液細胞を作り出す働きと両方あります。 *2 分化  若い細胞から、次第に機能を持つ、成熟した細胞に成長する過程を分化といいます。 *3 表面抗原  細胞には分化と共に、細胞の表面に現れる抗原(蛋白)があり、それを調べることにより、どの成熟段階の細胞か分かります。 *4 T細胞、B細胞  リンパ球も、様々な種類に分類され、T細胞、B細胞はその中でも大きなものです。T細胞は移植後のGVHDに重要な役割をします。 *5 コロニーアッセイ  造血幹細胞を培地で増やすと、大きな細胞集団をつくってきます。作られた細胞集団を解析して、どのタイプの幹細胞があったかを判断するのです。CFUはコロニーフォーミングユニットの略で、CFU−Gは顆粒球を作るコロニーのことです。 *6 髄外造血  通常血液は骨髄で作られますが、もともと胎生期には肝臓や脾臓で作られています。骨髄が何らかの理由で血液が作られなくなったとき、もともと造血能力のある肝臓や脾臓などの骨髄の外で作られ髄外造血と呼んでいます。 *7 受容体  様々な刺激は、かならず刺激を伝えるもとの因子と、それを受け取る受容体があります。受容体が因子を受け取って、その受け取ったことを細胞の内側に伝え、細胞が次の反応を起こします。刺激の数だけ受容体が存在することになります。 *8 CD34  表面抗原の一種で、かなり幼弱な幹細胞に近いレベルでの表面抗原です。CD34をもっている細胞のごく一部が幹細胞です。 *9 CD38  リンパ球系の幼弱な細胞に見られる表面抗原です。CD34陽性、CD38陰性とは、リンパ球に分化する前の幼弱細胞という意味です。 *10 臍帯血  臍帯(へその緒)の中には、造血幹細胞が非常にたくさん含まれています。通常100ml〜200mlの臍帯血がありますが、その中にはそのままでも小児の幹細胞移植に充分な幹細胞が含まれており、臍帯血バンクも考えられています。 *11 無血清下  血清があると、未知の因子によって増殖が行われている可能性もありますが、いっさい血清のない条件で培養を行ったということは、純粋に加えた因子のみで増殖していることになります。 *12 同種  通常骨髄移植には同種、自己とあります。自己は自分の骨髄を用いること、同種は同じ人間同士のことです。チンパンジーなどの骨髄を使う場合は異種となります。 *13 5リットル  幹細胞採取を行うとき、血液の処理量は約10リットルとなります。連続的に分離できる機械で、毎分60mlで約3時間採取します。 *14 GVHD  移植片対宿主病というもので、骨髄移植では克服しなければならない重要な反応です。通常の臓器移植における拒絶反応が移植されたドナーの臓器に対して患者の免疫担当細胞が攻撃を仕掛けるのに対し、骨髄移植は、通常の拒絶反応のほかに、免疫担当細胞そのものを移植するため、ドナーの免疫担当細胞が、患者の体に攻撃を仕掛けるのです。臓器の障害の程度に応じてT度からW度まであります。 *15 G−CSF  造血因子の一つで、顆粒球系(G)のコロニースティミュレイティングファクターの略です。 *16 好中球が500を越える  好中球が1μLあたり500個以上あると、ちょっとした細菌感染には抵抗力を持ちます。無菌室が開放になる基準でもあります。 *17 連鎖傾向  通常確率的にはAが10個ありBが20個あれば、その組み合わせは 10×20の200個になりますが、HLAの場合は、単純にはそうなりません。これは遺伝子上でHLAの遺伝子はかなり近傍に位置し、多くは一緒になって遺伝するからです。 遺伝子上で、2つの距離が離れれば離れるほど、その中間で交差が起きて、遺伝子の組み替えが起きる可能性が高くなります。 *18 MLC  リンパ球混合試験のことで、実際に患者の生きたリンパ球とドナーの生きたリンパ球を混合培養して、互いに攻撃し合うかどうかを判断する検査です。 (*の下の番号は、文中の番号を示します。) 三重  勇気の会では、2月26日三重県津市の県総合文化センターにて東ちづるさん、大谷貴子さんを招いてトークショーを開きました。  あいにくの雨の中でしたが、定員150人のところ約200人が参加し、会場は熱気に包まれていました。  会場の前では、三重県の骨髄バンク運動の始まりとなった海住千華子さんの母親らの作るキルトサークル“プチ”制作の作品展と、バンクのパネル展も行われ“千華子”と題したキルトなどが展示されました。  トークショー会場の前面にも、 “骨髄バンクに登録を”とパッチワークされたキルトが飾られ、会場は、暖かな雰囲気でした。  第一部は、三重県紀宝町の“さわらび紀宝コーラス”の演奏が行われました。“汽車”“美しき碧きドナウ”などの後、一昨年前の勇気の会紀州支部設立記念シンポジウムでも演奏された“ある愛の詩”を演奏しました。“ある愛の詩”は、アメリカの純愛映画の名作である同名の映画を朗読、ピアノ、コーラスで再現します。主人公のジェニファが“愛とは決して後悔しないことよ”との言葉を残して、白血病で亡くなっていく結末は、会場の涙を誘いました。  続いて、トークショーが行われ、大谷さん、東さんそれぞれの、体験談の後、三重県内在住のドナー経験者の女性と、再生不良性貧血でドナーを待っている高校1年生の女性が参加して進められました。提供の経験や、輸血を受けながらの高校生活の体験を聞き最後には、それぞれが、一言づつ話して締めくくられました。その中で、東さんは、“私は、絶対ここにいる彼女は助けたい、死んじゃいけないと思う”とドナーの増加を強く訴えた。  トークショー終了後のアンケートで、骨髄バンクをご存じでしたかとの質問の回答には、知っていたと答えていただいていた方が多く、このトークショーを聞いて、今まで間違った認識をしていた。登録することについて検討してみようという気持ちになった。との意見が多くありました。今後は、骨髄バンクについての正しい知識、さらにドナーに実際になってもらうことの重要性を広めていかなければならないということが分かりました。三重県では、地理的条件から登録にいけないという声も今まで多くありましたが、現在は四日市、伊勢の両保健所での、登録時の一次検査が可能となっており、今後はそのPRが重要です。四日市、紀州では、すでに支部活動が行われていますので、さらにその他県内各地域での活動が、今後の目標といえます。 岐阜 岐阜県行政との骨髄バンク啓発活動  岐阜県議会での骨髄バンクの理解と協力は、当初は一部の県議会議員のみでしたが、県議会一般質問で骨髄バンクが扱われるなど関心が広まって参りました。昨年の6月に行いました「県医療体制の整備と充実を求める請願」については、全議員が党派を超えて推薦書に署名し、本会議では全会一致で採択される他、さらには昨年11月県議会の一般質問の中で骨髄バンクの登録窓口の件が取り上げられたことなど、関心の高まりが見られます。  一方県では、いち早く岐阜県骨髄移植推進連絡協議会が設立され、県民から熱い期待を受けてきましたが、この組織が活発に活動することはなく、行政としての取り組みについては形骸化しつつある状況です。こうした中で、先の一般質問に対しては、県衛生部長が答弁し、その中で県としての新たな取り組みが示されまし た。それによると、従来、一次登録はデータセンターのみの採血で、その採血日すら限定するなど、データセンターとしては後退しつつある状況でしたが、この1月末には2カ所の保健所で開始し、さらには平成7年度にはこれを5カ所に増やすという積極的な内容です。この保健所採血は、該当地区の人口が少ないため多くは期待出来ないかもしれなません。しかし、地元で採血できるようになったからと、さっそく登録に訪れる人が見受けられ、うれしい限りです。ちなみに県衛生部長自らドナー登録されるなど、積極的な取り組みがうかがえます。  一方県の広報センターは岐阜県広報「ふれあい」の1月号で骨髄バンクボランティアを大きく取り上げ、県下各地にボランティアの輪が広がりつつあります。  しかし県行政としては担当により取り組みへの差が出るため、現在は県としての広報活動は行われていないに等しいのです。従って、私たちボランティアとしては、今後県から骨髄バンク啓発への取り組みの具体案を引き出すように協議を重ねて参りたいと思います。  さらにはボランティア希望者が、地域により差はありますが、全県域を網羅してカバーしつつあります。ボランティアの少ない地域でのシンポジウムを開催するなどして、ボランティアの充実に努め、西濃、岐阜、中濃、東濃、飛騨と広い県域を分けて、それぞれの地域で地元に根付いた活動を行い、ドナー拡大に向けて努力を重ねて参りたいと思います。 献血へのご協力   ありがとう     ございました  前号にてお知らせいたしました阪神・淡路大震災による血液センターの一時的な機能低下は、その後回復により、窮地を脱したようです。みなさまの暖かいご協力の結果、血液不足もそれほど深刻化せずに回避できました。しかし現在でも何万人もの方が避難所生活を余儀なくれており、献血者の慢性的な不足が問題となってきています。今後も末永く献血にご協力をお願いいたします。  献血の中でも、各成分を有効利用できる成分献血もお願いいたします。 愛知県が骨髄ドナー登録推進事業に780万円の予算  4月からの保健所での骨髄バンク登録開始に向けて、ポスター、リーフレットの作成やキャンペーンを催す啓発費として認められました。 今後は、私たちボランティアも行政と手と手を取り合って、正しい知識を一般県民の方に普及していく所存です。 保健所で骨髄バンク登録開始される  今まで血液センターでしかできなかった骨髄バンクへの登録が、保健所でもできるようになりました。開始は4月の第2週からで、登録手順は、通常の手続き(骨髄移植推進財団に登録申し込み0120−377−465し、採血の案内を受け取った後、担当データセンターに登録予約をし、該当採血場所を決定する)の最終段階で、採血場所を該当保健所に希望されれば可能となります。 開始される保健所は2カ所で、 岡崎保健所(毎週木曜日) 半田保健所(毎週水曜日) の10時〜15時の間に、1時間に1人の割合で登録可能となります。  通常の手順を経ずに、直接出向かれても、登録できませんので、必ず正規の手続きを経て下さい。 日本骨髄バンク近況  日本骨髄バンクの近況につきご報告いたします。 平成7年2月末現在、  ドナー登録数 61,044人となっています。HLA適合患者、ドナーの状況は表の通りで、移植実施数は既に300人を越えました。登録問い合わせ状況は、昨年後半は低迷状態だったようですが、今年に入ってから、再び問い合わせが増加しており、3月くらいから登録数にも反映されてくるものと思われます。 年月 問い合せ 登録申込 登録数 累計 94. 1 7,995 5,532 2,741 39,422 2 7,569 7,068 3,281 42,703 3 6,236 6,005 3,647 46,350 4 3,259 3,405 2,545 48,895 5 2,076 2,703 1,954 50,849 6 1,899 2,480 1,650 52,499 7 1,344 1,737 1,228 53,727 8 1,456 1,643 1,228 54,955 9 1,354 1,605 745 55,700 10 2,642 3,237 1,082 56,782 11 1,152 2,309 1,201 57,983 12 1,675 1,724 730 58,713 95. 1 5,587 2,499 779 59,492 2 4,024 3,653 1,552 61,044 HLA適合患者、ドナーの状況    (平成7年3月8日現在)  患者状況        検索依頼件数 2、791人    2次検査適合 1、798人  ドナー状況   1次検査適合 46、947人   2次検査実施 36、348人   2次検査適合  6、291人 骨髄移植実施時期別移植件数  平成5年1月〜平成6年12月             291件  平成7年1月      33件 心からの温かいご寄付をありがとうございました。 平成7年1月10日〜3月10日受付         敬称略・順不同 東海骨髄バンク宛 山本 幸子 2,000 匿名希望 10,000 豊田ルネッサンスLC 100,000 くまだ裕通後援会 30,500 蟹江 幸治 3,000 酒井内科 148,335 瀬山 吉之助 2,000 神子澤 君恵 3,000 名市立大医学祭実行委員会 164,060 匿名希望 1,000 匿名希望 10,000 豊田LC 369,111 豊田LC渡辺晃 100,000 津島LC 324,933 蟹江LC 86,300 弥富LC 243,918 海部LC 618,303 佐屋立田LC 337,973 豊明LC 565,820 犬山LC 100,000 岡崎竜城LC 300,000 常滑LC 243,236 豊橋ちぎりLC 79,263 春日井LC 172,300 安城LC 105,794 刈谷LC 71,652 安城南LC 81,888 刈谷衣浦LC 78,476 安城中央LC 75,064 豊橋西LC 30,000 一宮尾北LC 100,000 豊橋東LC 532,570 知立LC 492,528 三好愛知LC 72,551 豊田南LC 59,239 豊田加茂LC 62,529 豊田東名LC 52,656 愛知中央LC 46,074 豊田ルネッサンスLC 39,492 春日井中央LC 184,200 半田LC 149,671 美浜LC 158,990 南知多LC 46,562 阿久比LC 226,591 武豊LC 39,910 知多LC 63,192 東海LC 66,518 大府LC 97,156 東浦LC 56,540 高浜LC 469,000 岩倉LC 100,000 オオズミトシエ 2,000 広田 行夫 19,139 高野 好史 1,000 諏訪 孝子 500 浅賀 照子 5,000 鈴木 ゆかり(ライオンズ気付) 30,000 北村 裕美子 テレカ2,000円分 福澤 節子  切手770円分 匿名希望缶 ジュース、ドリンク、封筒 森 都志子 テレカ50度数 愛知の会宛 永田 信男 100,000 富士ゼロックス端数倶楽部 50,000 石川 勝美 10,000 安達 秀次 3,000 富士ゼロックス 50,000 豊田LC献血募金 1,526 電装秋祭募金 1,000 岡崎健康フェア 8,497 匿名希望 10,000 匿名希望 1,000 石澤 淑子 2,000 光陽冷熱工業且ミ員一同  30,000 西田 5,000 馬越 恵子 2,000 城宝 和茂 10,000 大田 進也 1,917 杉本 秀則 10,000 安達 秀次 3,000 吉野 光美 3,000 山本 好夫 20,000 前野 泰宏 10,000 河合 悦子 3,000 橋本 佐代子 3,077 平野 誠 5,000 内藤 慶子 5,000 田中 喜代恵 切手1,646円分 戸谷 信義 切手1,320円分 テレカ100度数 斉藤 ミキ テレカ300度数 遠藤 脩子 切手1,000円分 直井 由香利 テレカ555度数 小田    切手4,114円分 匿名希望 切手1,000円分 編集後記  今回の記事は、専門的な内容のため、非常に難しい部分もあるかもしれませんが、骨髄バンク事業の一環として、この様な研究がなされていることのご報告と、今後の骨髄バンクのある程度の方向性を示すものとして、ある程度のイメージを持って頂きたくて掲載いたしました。  このことが実現できれば、末梢血からほんの数cc採血をして、その中から幹細胞を分離し、移植に必要な数まで増幅させることや、もっと言えば、違ったHLAを持った幹細胞をそれぞれ1ccほど凍結保存しておき、必要に応じて解凍、増殖してその中から1cc元に戻して凍結し、残りを移植に使うということを繰り返していけば、新たなドナーは必要無くなるわけで、これが本当の意味での骨髄バンク(幹細胞銀行)となるでしょう。  また現在の末梢血幹細胞採取のためには、G−CSF(前述)を数日間注射で投与しなければならず、これを非血縁ドナーに応用するには時間的な制約もありますが、もし、近い将来、経口薬のG−CSFが出来れば、それも解消するかもしれません。いずれにしろ、今後、あらゆる可能性を秘めて医療は進んで行くことでしょう。  前号で、今回から形式を変えると宣言しておきながら、全く同じ形式ですみません。新しいシステムの導入に時間がかかったことと、まだ新しいソフトを使いこなせないために、今回は同様の形式でさせていただきました。失礼しました。  (北)