***************************************************************** *TUNORUKAIKAIHOU_TUNORUKAIKAIHOU_TUNORUKAIKAIHOU_TUNORUKAIKAIHOU* ***************************************************************** * * *  募る会会報 第3号                * * * *               昭和63年 9月 日発行 * * * *    発行 名古屋骨髄献血希望者を募る会 代表 大谷貴子 * *    編集                   北大路元次郎 * * * ***************************************************************** *TUNORUKAIKAIHOU_TUNORUKAIKAIHOU_TUNORUKAIKAIHOU_TUNORUKAIKAIHOU* *****************************************************************  成分献血という言葉を聞いた事がありますか?  今回は愛知県赤十字血液センターのご協力もあり、センターが成分登録者むけに発行している会報紙「ドナーメイト」を同封させて戴くことが出来ました。 ここに当名古屋募る会代表、大谷貴子の文章が掲載されています。実際に成分献血で命が救われた本人の弁として、一読していただけたら幸いです。  そのほか、実際に骨髄移植を受けられた患者さんの言葉、赤十字血液センターと骨髄バンクとのかかわりなどが掲載されています。骨髄移植と成分献血は切っても切れない関係にあり、成分献血なしには骨髄移植は成り立ちません。また骨髄移植に限らず、多くの病気で成分献血の必要性が望まれています。  骨髄バンクの登録はちょっとまだ自信がないが、成分献血なら協力できるという方もいらっしゃるかと思います。成分献血は少し時間がかかりますが、骨髄バンク同様、ご協力お願いいたします。  以下、簡単に成分献血についてご説明申し上げます。 成分献血とは  東海骨髄バンクに登録して戴くときに成分献血にもご協力を願えた方はご承知かと思いますが、まだ聞いたことのない方、充分にわからないために登録を躊躇している方がいらっしゃるかと思い、ここに簡単にお知らせいたします。  かなり以前は、輸血の場合、採取したそのものの血液を輸血していました。そのため血小板が少なく、赤血球は充分ある患者さんも、赤血球を含めた全部の血液を輸血しなければならなかった訳です。しかし、近年の医学の進歩により、今では患者さんに必要な成分だけを輸血出来るようになっているのです。  その実際を簡単に記しますと、街頭献血でご協力戴いている献血は、全血液200mlまたは400mlを戴き、その後、血液センターに運ばれます。センターでは、その血液を遠心分離にかけてそれぞれの成分、赤血球、血小板、血漿に分けます。だいたい200mlの献血から赤血球約100ml(濃縮状態のもの)、血小板約20ml、血漿約80mlが採取されます。医師達は、患者さんの赤血球が不足している場合は赤血球のみを、血小板が不足しているときには血小板のみを輸血すればよく、必要のない成分は輸血しなくて済むわけです。  しかし、血小板や血漿は一回に必要な輸血の量が多く、そのため一回の輸血に血小板だと10〜20人の、血漿だと5〜10人の血液を輸血しているのが現状です。白血病の場合、一度の治療に必要な血小板輸血は約5〜8回で、そのような治療を数回繰り返します。その場合、約500人の血液が輸血されることになり、患者さんに多大な負担をかけることになります。  そこで最近盛んに行われているのが成分献血です。 成分献血から得られた血小板を用いると、一人の献血者から約10〜20人分の量を得る事ができるために、患者さんに輸血される数がほんの約30人に減ることになり、輸血によるさまざまな副作用を軽減することが出来ます。さらに血漿中に含まれている凝固因子などのタンパク質や、血小板は寿命が短く、できるだけ新鮮な成分を輸血するためには、その場で採取して、その日のうちに患者さんに輸血することが必要です。(血漿は凍結保存が可能ですが、血小板は現在は不可能です。)   成分献血をして戴く場合、献血者にも良い点があります。それは余分な赤血球を採取しなくて済みますので、その分肉体に対する負担が軽減するということです。普通の200ml献血をした場合、その後1カ月は献血が出来ず、400ml献血をした場合、その後3カ月は献血できないことになっています。しかし、血小板献血は採取後1週間で次の採取が出来、血漿献血は採取後2週間で次の採取が出来ます。(ただ年間の最大量は決められています。)  実際には次の方法で行います。  血漿採血の場合、片方の腕で採血を行い、遠心分離にかけ血液を成分に分離、必要な成分を採取し、残った赤血球は同じところから返血します。それを3〜4回繰り返し、必要量を採取します。正味時間は1時間程度です。  血小板採血の場合、血漿採血と同様の方法で行う場合もありますが、別の方法があります。片方の腕から採血、遠心分離を連続的に行い必要成分を採取後、もう一方の腕から返血します。正味時間は事前の検査を含め1時間半〜2時間くらいになります。 成分献血登録とは  血小板輸血も、頻回に行っていると効果がなくなってしまう場合があります。これは、他人の血液を頻回に輸血していると、自分と他人を区別し始める「抗体」というものが体内に作られるようになり、それが輸血された血小板に攻撃を加え、破壊するようになるのです。血小板が少ないまま放置していると、体内のさまざまなところで出血が起こってきて、生命が危険にさらされることになります。その場合でも、白血球の型であるHLAを一致させた血小板を輸血することにより、命が救われることが多くあります。そこで提供希望者のHLAを調べ登録し ておき、そのような患者さんが 現れたら血液センターからの要                             去る3月9日、東海骨髄バンクは記者会見を行い、最近の状況と第1号成功例を報告しました。記者会見で用いられた資料を最新の資料に置き換えここに引用し、簡単なコメントを述べてみたいと思います。 《図1》 平成2 年4月末現在、患者登録者総数353人で、東海骨髄バンク発足後、月を経る毎に登録者数が増え、現在月平均50人近請に応じ血小板を採取し、患者さんに供給するための登録なのです。その意味では骨髄を供給する骨髄バンクも、血小板を供給する成分献血登録も同じですが、骨髄提供は一生に一度あるかないかの程度ですが、血小板輸血を必要としている患者さんは常に数多くいます。しかも血小板採血の要請がない場合は血漿献血にご協力して戴いて良いわけですから、献血して戴いた血液は常に有効に使用されるわけです。(血漿献血は登録しなくても行うことが出来ます。)採血基準は体重50Kg以上、年齢は血小板採血18才〜54才、血漿採血18才〜64才となっています。街頭献血に比べると、かなりの時間を必要としますが、輸血を受ける患者さんにとってはさまざまな負担が軽くなるという利点があります。 い登録申込があります。    《図2》登録患者の地域 別では、近畿、関東、中部が主ですが、北海道から九州まで全国的にまたがっています。このことからも、全国的な骨髄バンクの早期実現が望まれます。 《図3》提供希望の問い合わせ も4月末現在、5300人と なっており、葉書登録者数も 2500人に迫ろうとしてい ます。その中で実際にHLA 検査を済ませた人は1000 人となっており、順調に進ん でいます。しかし、提供問い 合わせ、葉書登録の急速な伸 びとは異なり、採血済みの数 の伸びはHLA検査及び検査 機関の特殊性もありあまり進 んでいない状態であり、今後 の検討課題の一つとなってい ます。 《図4》提供問い合わせの地域 別では、中部地方を主として 関東、近畿など全国的またが り、このことからも早期に全 国的な規模で公的な骨髄バン クの設立が望まれます。   (ここに掲載したグラフで   は、検索した時期が少し   遡るため図3とは少し異   なります。)   HLA検査が既に済んだ  方の内訳では、男女ほぼ半分、 地域としては東海地方が80 %となっています。これはH LA検査がどこでも出来る検 査ではないという、特殊性に よるものと思われます。   1000人中、30%の方 が赤十字血液センターの成分 献血登録者であり、最近では この割合はもっと増えていま す。現在、HLA検査がスム ーズに行えるよう、関係各所 と調整中です。 《図5》最後の図は骨髄バンク  の簡単な機構とともにその人 数を表したものです。葉書登 録者は約2500人、そのう ちHLA検査が済んだ人が約 1000人、患者登録者は約 353人。マッチングの結果、 131人の患者にHLA一次 検査(HLA−A、B)で一 致した提供希望者が見つかり ました。公平なコーディネー トの結果、最終的にMLC検 査(混合培養検査)まで終了 したのが10名、準備中が9 名、MLC一致、骨髄移植に むけ準備中の患者が5人、そ のうち2人は既に骨髄移植が 終了、1人は近く退院の予定、 となっています。   これは、成人で、第3者的 機関にてコーディネートを行 い非血縁者間骨髄移植を行っ た日本最初の症例です。   さらに3例以上骨髄移植準 備中ということで、骨髄バン クの有効性を証明するものと して非常に重要なことと思い ます。  記者会見の席上、両ご本人の許可を戴いて、東海骨髄バンクに寄せられた手記を紹介いたしした。  ここに、全文をご紹介いたします。         骨髄提供者の手記   骨髄献血の動機  私が病気で輸血が必要ならば、何としても輸血をしてほしい。また、目が見えず角膜移植さえすれば、腎臓が悪く、移植さえすれば良くなるのであれば、何としても手術をしてほしい。このように考えるのは私だけでしょうか。しかし、今は健康で何も必要ではありませんが、いつかそのようになるかもわかりません。ただ、現在、それらを必要としている人々がいるのは確かなことです。そこで、健康な私が今できることは献血であり、アイバンク、腎バンクへの登録であると考え、そのようにしてきています。  そうした中、新聞で骨髄移植の有効性と、提供者の募集を行っている旨を知りました。当然のこととして登録をと考えました。明日、わが身に病がくるかもしれない。その時は多くの提供者がいてほしいと考え、まず自分が提供者にならなくてはと考えたしだいです。  しかし、実際に提供するにあたっては、全身麻酔で手術をすることで、眠っている時に処置されるという不安、若い女性(看護婦さん)にすべてを見せなくてはならないという恥ずかしさがありました。でも私一人いなくなっても何ら変わらない社会にあって、この私を必要としている人がいる。その方は生死のはざまにいて、私を待っていてくれる。私でも社会に働きかけ、役に立つことができる。また、明日はわが身という考え が、途中でやめようという思いを起こさせなかったにすぎませ ん。多くの先生たちが全力を注いで対応していただけるという安心感が私を逆に勇気づけました。  骨髄提供を終えて  術後、気がつくと回りに先生や看護婦さんがおられ、逆に何ごとかなと驚いたしだいです。ただ麻酔のためか眠く、起きて いないと皆さんに悪いと思い、眠さを耐えようとしていました。 入院中は手厚い看護をしていただき、安心して日々を過ごしていました。腰のつっぱりや痛みは退院後も若干続き、特に痛みは徐々に少なくなってはきましたが、一か月程気になっていたようです。  しかし、移植をしたからといってすべてが良くなるのではなく、極めて難しい処置であると聞いていたため、私の傷よりも移植はうまくいったのか・・・、患者さんの回復は・・・と気になる日々でした。そんな時、先生から患者さんの状況を知らせていただき、やはりしてよかったと実感したところです。  それ以降、新聞、テレビで骨髄移植が伝えられると、周囲の人々はそれを話題にすることが多く、その結果、正しく理解し、注目さえしてくれるようになりました。そうした中から、2人が登録のハガキを出してきたよと言ってくれた時は本当にうれしく思い、このような輪が益々大きくなり、一人でも多くの方が社会復帰できるように努力をしようと感じたしだいです。            患 者 の 手 記  骨髄提供をしていただいて  白血病と知ったのは、健康診断の血液検査でおかしいと言われてから2カ月ほどたってからでした。全く何の自覚症状もない中で、数年先か、数カ月先かにやってくる悪化の時期を待つしかないという状況でした。信じられないという思いの一方、何とか病気と闘う方法がないものかという思いで頭の中はいっぱいだったように思います。非常に有効な治療法として、骨髄移植という方法があると知ったのですが、これには移植に必要な血液のタイプ(HLA)の同じ人から骨髄を提供してもらう必要があるとのこと。しかし、家族の中にも、親戚の中にもこのHLAの一致する人はいませんでした。私の場合、2000〜3000人に一人の割合でHLAの一致する人がいるとのこと。通勤の満員電車に乗っているときも、この電車の中に20 00人くらいいるだろうか、HLAの一致する人が一人くらい いるだろうか、とつい考えてしまっていました。しかし、もし一致する人がいても、他人のために入院してまで提供してくれる人がいるかどうか、と考えると、やはりどうすることもできないんだと思うしかありませんでした。  一年ほど後、病状が悪化してきて入院となりました。採血した後、血がなかなか止まらないのを見たときは、とうとうやってきた、もうこの病院を出ることは出来ないのかもしれないと思ったことを憶えています。ちょうどこのころ東海骨髄バンクに登録されている方の中にHLAの一致する方がいて、提供者となっていただけると聞きました。本当は叫びたいくらいうれしかったのですが、本当に提供していただけるのだろうか、断られるのではないか、と思うと不安でしかたありませんでした。移植の当日も、提供者の方が風邪をひいたりしないだろうか、 運ばれてくる骨髄液が交通事故に会わないだろうか、などと実 際に腕から骨髄液を点滴でいれてもらうまでは、提供者の方に は失礼なのですが、不安でした。  現在、移植から数カ月がたちました。トラブルはいろいろありましたが、好きなものも食べることができるようになり、散歩もできるようになりました。提供者となっていただいた方には、本当に感謝するとともに、尊敬いたしております。移植をしても100%治るかどうかわからないけれど、病気と闘い、治すというチャンスがないのはたいへん辛いことです。いま苦しんでいる患者さん、将来発病する患者さんの一人でも多くの方に、生きるためのチャンスが与えられるようにと願っています。最後になりましたが、私の提供者となっていただいた方、ほんとうに、ほんとうにありがとうございました。また、骨髄バンクを運営されているたくさんの先生方、ボランティアの皆さん、ほんとうにありがとうございました。 3月6日 患者  厚生省の骨髄バンクの検討委員会の報告書が出されました。ここに全文を紹介いたします。 平成元年度厚生行政化学研究事業「骨髄移植の評価に関する研究」 主任研究者  高久史麿 研究協力者  浅野茂隆,太田和夫,大平睦郎, 大熊由紀子,十字猛夫、西三郎, 町野朔,三島済一,宮崎保, 平成2年4月25日 [はじめに]  ここ十年来、主に白血病や重症再生不良性貧血の治療法として骨髄移植が行われるようになってきており、年々移植数も増え昭和63年には年間約250例実施されている@。また、治療成績も徐々に 改善しつつある。  しかし、移植された骨髄がう まく機能するためには白血球の 型(HLA型)を提供者(ドナー)と患者(レシピエント)との間で一致させる必要があり、 これが両者間で一致するのは500〜数万人に1人とされている。同胞(兄弟姉妹)にHLA型が一致するものがいる割合は全患者の4分の1前後であり、それ以外の患者が骨髄移植を希望する際には第三者(非血縁者)からの骨髄提供にたよらざるを得ないA。  現在、骨髄の提供は血縁者、非血縁者を問わず、健康人から の骨髄採取が基本となっているが、一般に生体からの臓器移植においては、健康人であるドナ ーへの肉体的精神的侵襲を始め様々な問題が内在している。  米国をはじめ西欧諸国では、非血縁者からの骨髄提供を効率的に行う目的で、善意の提供者からなる骨髄データーバンクシステムがすでに機能しつつあり、米国ではすでに約300例の移植がこのシステムを利用して行われているB。我が国においても同様のデーターバンク設立の 動きがあり、患者家族を中心に 「骨髄提供者を募る会」、「骨髄バンク」といった名称で全国 各地での活動が展開されている。  本研究では、骨髄提供者のリスク、治療成績、対象疾患、適応基準(時期)等につき検討を加えることにより、現時点における骨髄移植術の評価を行うとともに、非血縁者間における骨髄移植のためのデーターバンクシステムの問題点についても検討を行った。これにより、今後の骨髄移植の在り方を探るものである。 [骨髄移植の現況] 1.移植数及び対象疾患   厚生省がん研究助成金事業 中の「骨髄移植による悪性腫 瘍の根治療法に関する研究」 @によれば、これまでにこの 研究班に登録されている移植 の対象疾患とそれぞれの移植 数は表1のごとくである(自 家骨髄移植56例を含む)。対 象疾患にみると、急性及び慢 性の白血病が全体の7割近く も占めている。同報告によれ ば、昭和63年に移植を実施し ている医療機関は41カ所にの ぼっている。しかし、これで も諸外国に比べると移植数は まだ少ない。1987年にお ける諸外国の骨髄移植数をみ ると、米国では1800件、 西欧では1600件にのぼっ ているC。   なお、我が国における骨髄 提供はほとんどが血縁者から のものであり、非血縁者から の提供は5例に過ぎない@。 2.治療成績   骨髄移植の対象疾患別の生 存率は図1のようになってい る。年々治療成績は改善され ているが、急性白血病におい ては、第1寛解期に移植を受 けた症例と、第2、第3寛解 期(再発)に移植された症例 とでその生存率を比較すると かなりの差がある。重症再生 不良性貧血の骨髄移植による 5年生存率は約70%である が、1983年以降に移植を 受けた急性白血病症例全体の 5年生存率は48%であるD。 これを移植時期で分けてみる と、第1寛解期移植を受けた 症例では5年生存率が60% を越えているが、第2寛解期 以降の症例では20〜40% と低値となっている。   なお、白血病における骨髄 移植法と化学療法との治療成 績の比較については後述する。 3.社会の動き   我が国における骨髄移植に 関する社会的論議は充分尽く されておらず、もっぱら骨髄 提供のデーターバンク、いわ ゆる骨髄バンク設立の要望が 中心となっている。その場合 の議論の論点は、国その他の 公的機関による骨髄バンクの 早期設立を図るべきではない かというものである。   [骨髄移植における問題点] 1.ドナーにおける問題点   骨髄移植におけるドナーは 生着に十分量の骨髄を採取す るため、全身麻酔をかけたう え、腸骨に数十カ所の針を刺 し500〜1000mlの骨 髄細胞を含んだ血液を採る。 それに伴い、3〜4日の入院 が必要となる。その際の肉体 的リスクとしては、感染症な ど採取に伴うものと、麻酔に ともなう事故とがある。表2 は日本@及び国際骨髄移植登 録Eのドナーの合併症の統計 である。これまで死亡例はな いが、敗血症、悪性高熱症な どの重篤な合併症が発生して いる。   これら合併症の予防には、 麻酔医をはじめ熟練した医療 スタッフが慎重に採取に臨む のが当然のことであり、これ により採取にともなう感染症 などの合併症の予防が期待で きる。しかし、麻酔に伴う合 併症はいかなる注意を払って も一定の確率で発生すること が現時点では避けられないも のであり、予防には自から限 界がある。麻酔に伴う全国規 模の事故統計は我国にはない が、いくつかの施設にあける 統計はあり、麻酔に伴う事故 の死亡率をみると麻酔が直接 の死因と考えられるもの0. 02%F、麻酔が死因と関連 するもの0.095%G、0. 064%Hというデーターが ある。   一定の確率で生じる可能性 がある事故については、ドナ ー及びレシピエントから独立 した第三者が充分な説明をし た上でドナーの自発的な同意 を得る必要がある。また、通 常の医療行為の対象者と異な り、骨髄採取は提供側への利 益もないことから、有効な同 意の前提となるべき意思能力 も高度なものが必要となるの で、未成年者などはドナーか ら除かれなければならない。   ドナー事故発生時の補償に ついても対応できる体制を整 えておく必要がある。米国に おいてはドナーの事故発生に たいして民間保険がこれをカ バーしており、保険料はレシ ピエントが負担している。我 が国においても、その様な方 法を含め、様々な方法の中か ら最も適した方法が選択され るであろう。さらに、その際 の補償責任の所在も明らかに しておく必要がある。   一方、それ以外の補償、例 えば、入院に伴う休業補償、 必然的に発生する障害の補償 についてはドナーのボランテ ィア精神に鑑み、また、売買 の関与の恐れを考えると慎重 に対処すべきであると考えら れる。   次に、充分な説明によりド ナーから骨髄提供の同意が得 られた場合においても、ドナ ーの骨髄提供の意思の決定権 は最後まで保証されなければ ならない。骨髄移植では最初 の同意から実際の提供までに かなりの期間を要するが、そ の間のドナーの意思の変更に 対応するために、複数のドナ ーを選出しておくことなどが 考えられる。これにより、ド ナーの精神的負担も軽減され、 精神的強制によって同意の撤 回を困難にさせるという事態 も避けられることになる。肉 体的侵襲という面のみからド ナーの立場をみると、骨髄移 植のドナーは「生体腎移植に おけるドナー」と「献血者」 の両面の性格を有すると考え られる。即ち、全身麻酔及び 入院の必要性という観点から は生体腎移植のドナーにおけ る侵襲に近く、移植臓器の完 全な機能回復という点では献 血のドナーに等しい。   生体腎移植は一般に血縁者 間におけるやむを得ない治療 法と考えられており、非血縁 者からの移植については、移 植学会においても「・・・第 3者からの生体腎移植は、い かなる事情があろうとも現状 においてはこれを慎むべきで ある・・・・。」Iという見 解を打ち出している。これに 対し、献血については日本赤 十字社を中心に、推進すべき 事業として国及び地方自治体 が広く国民に協力を呼びかけ ている。   このような狭間にあって、 骨髄移植のために非血縁者た るドナーに肉体的侵襲を加え ることの可否についての問題 は、現在のリスクの程度と治 療成績並びに以下に述べるレ シピエントの適応等の問題を 考慮するならば、現時点では 明確に回答が得られるもので はないと考えられる。   2.レシピエントにおける問題 点   レシピエントの問題点の第 1として、骨髄移植術の適応 がある患者にとって、誰でも どこでも受けられる治療方法 であるかどうかという骨髄移 植の供給体制を考える必要が ある。移植施設についてみる と、前述のごとく内科、小児 科含めて全国に41カ所の移 植実施施設があるが、都道府 県別にみると17都道府県で 実施されているに過ぎない。 また、1ヶ月間に平均1例  (年間12例)以上の移植を 実施している施設は全国でわ ずかに7施設である@。無菌 室等の十分な施設設備の不足、 医師をはじめとする医療スタ ッフの不足等は、今後骨髄移 植が広く推進されるべき治療 法となった時、レシピエント にとって障害となる可能性が ある。   第2点目の問題は、骨髄移 植がすべての白血病の治療法 として、唯一かつ最善のもの であるかという問題である。 白血病においては、従来より 化学療法が主たる治療法であ る。これと骨髄移植との治療 成績のprospectiveな比較研究 は、残念ながら我が国におい ては行われていない。諸外国 における文献での比較をみる と、成人の急性白血病の第1 寛解期における化学療法と骨 髄移植では、生存率において は両者間に大きな差がないと いう見解もあり、現時点では 明確な回答が得られていない。 ただし、第2寛解期以降の治 療法としては、骨髄移植が第 1選択であるというのが一般 的な見解であるJ、K、L。 しかし、第2寛解期以降の骨 髄移植による急性白血病の5 年生存率は前述のごとく20 〜40%であり十分満足すべ き治療法とはなっていない。 そのため、 移植をいつ行う のが最適であるかについては 論議のあるところである。第 3者からの骨髄提供を広く一 般に求めるのであれば、骨髄 移植が最も優れ、かつ十分な 成績をおさめた治療法である ことを示す必要がある。 そ のために厳密な骨髄移植の適 応基準についての正確な評価 を早急にすべきであると考え られる。   なお、以上の移植成績は血 縁者間のデータであり、合併 症の多いことが予想される非 血縁者間ではM、この第2点 目の問題が一層強調されなけ ればならない。   以上のレシピエントにおけ る問題は、次項のシステムに おける問題点を考える上で重 要性を帯びて来る。   3.骨髄バンクシステムにおけ る問題点   これまでに述べてきたよう に骨髄移植には幾つかの問題 がある。しかし、再発白血病 や重症再生不良性貧血の患者 にとっては生存を期待しうる 最善の治療方法である。その ため、血縁者間でドナーが見 つからない患者に対し非血縁 者から善意の骨髄提供を広く 行う、いわゆる骨髄バンクシ ステムを確立しようという患 者及びその家族等の動きには 十分理解できるところである。 しかし、骨髄バンクシステム の確立には、それ以前にクリ アすべき問題が残されている。   まず第一に、バンクシステ ムは従来の医師−患者関係の みで成立するものではなく、 第三者の協力が不可欠である。 そのためには広く国民の理解 を深める必要もある。その点 において、公共性が担保され ていなくてはならない。   また、ドナーに対して必要 かつ十分なインフォームドコ ンセントをうるとともに公平 な骨髄のあっせんを行うには、 バンク組織が移植医療機関か ら独立した第3者的組織でな くてはならない。その際、ド ナーからレシピエントへのあ っせんの基準については具体 的に明示しておく必要がある。 また、あっせん結果について の評価を行う組織も必要とな ろう。   さらに、効率のよいあっせ んを行うにはより大きなドナ ープールとレシピエントプー ルが必要であり、そのための 広域的な組織が要求される。   これら、公共性、公平性、  広域性の全てを満足するた めには、民間の関与のみでは 難しく公的な機関の関与が必 要であるという考えがあるが、 その関与の程度については論 議があり今後の課題として残 されている。   次に、広くドナーを募集す るには、HLA検査等かなり の費用を要する。これは、レ シピエントに対する直接の医 療行為に当たらないため現行 の保険給付の対象とすること は困難である。今後、バンク システムを検討する中で、こ の費用負担の問題についても 検討が必要となる。それに加 えて、前述のごとく、事故に 対する補償体制を整えておく ことも重要である。   バンクシステムを円滑にす すめるには、HLA検査に習 熟していることも重要である。 HLAタイピングは現状では どこでも実施されている検査 ではなく、一定の技術レベル も要する。 さらに、広域的 なあっせんの場合には地域間 で同一のものを利用すること になり、HLAトレイの供給 も含め、一元的な管理センタ ーが必要となってくる。   また、移植を実施する医療 機関についても、移植設備の 充足や充分な移植実績等、何 らかの資格要件が必要であろ う。    [まとめ] 1.骨髄移植術は再発白血病  や重症再生不良性貧血におい て、現在、長期生存を期待し うる最善の治療法である。   2.第三者からの骨髄採取は、 ドナーのリスク等内在する問 題が幾つかある。しかしなが ら、他に代わりうる採取方法 がないため、現時点における 第三者からの骨髄移植はやむ  をえない治療法と位置づけら れる。 3.いわゆる骨髄バンクは、移  植医療機関等から独立し、公 平性及び公共性が担保された 広域的な組織により推進され るべきである。 4.骨髄バンクの設立及び運営 に関しては公的な機関の何ら かの関与が必要と考えられる が、その程度については今後 の検討課題として残された。   参考文献 @ 柴田弘俊:厚生省がん研   究助成金「骨髄移植による  悪性疾患の根治療法に関す  る研究班」平成元年度報告 A 高橋孝善、十字猛夫;   非血縁HLA適合骨髄提供  者登録制度(骨髄バンク)  ;医学のあゆみ、   146;449、1988 B 国際協力骨髄提供者組織   会議 1990年1月23日  コロラド C Bertin MM, Rimm AA,In-   creasing utilization of   bone marrow transplan- tation ; Transplantation,  48;453,1989 D 柴田弘俊「骨髄移植によ   る白血病の治療」    ;内科 64;863,1989 E IBMTR and SM    TT   ;Exp. Hematol 11;926,1983 F 金山利吉;駿河台病院   麻酔科20年;    日大医誌 43;503,1981 G 古川幸道、尾上 力;   麻酔に関連せる死亡;   日本医事新報1947;29,1981 H Becker HK, Todd DP;    A study of the death     associated with anes-     thesia and surgery.   ;Ann. Surg. 140; 234,1984 I 日本移植学会 声明文 (昭和60年12月27日) J Mayer RJ; Editorial; Allogenic transplanta- tion versus intensive chemotherapy in first remission acute leukemia is there a "best choice". J.Clin.Oncol.6;1532,1988 K Batturi A,Gale RP; Annootation;Chemotherapy versus transplantation in acute leukemia. Br.J.Haematol.72;1,1989 L Zitton R et al.; Alternating V repeated post remission treatment in acute myelogenous leukemia - a randomized phase I study (AML6) of EROTC leukmiaStudy Group Blood 73; 896,1989 M Hows JM et al.; Bonemarrow transplatation. 9 Gale PR et al. eds., Alan r.Liss,1989  編集者註   以上が厚生省が提出した 報書です。以下のものは、  厚生省の記者会見の時の 資料です。報告書の概要   と、検討事項が書かれて   います。 「骨髄移植の評価に関する研究」報告書について     平成2年4月26日   保険医療局疾病対策課 1.報告書概要   本報告書は、平成元年度の 厚生行政研究事業の中の「骨 髄移植の評価に関する研究」 においてまとめられたもので ある。(主任研究者;高久史 麿 東京大学医学部第3内科 教授)。報告書の内容は、主 任研究者他9名の研究協力者 による3回の検討会での議論 を中心とした。   報告書のまとめは以下のご とくである。 [報告書まとめ] @.骨髄移植術は再発白血病や  重症再生不良性貧血において、  現在、長期生存を期待しうる 最善の治療法である。 A.第三者からの骨髄採取は、 ドナーのリスク等内在する  問題が幾つかある。しかしな がら、他に代わりうる採取方 法がないため、現時点におけ る第三者からの骨髄移植はや  むをえない治療法と位置づけ られる。 B.いわゆる骨髄バンクは、移  植医療機関等から独立し、公 平性及び公共性が担保された 広域的な組織により推進され るべきである。 C.骨髄バンクの設立及び運営 に関しては公的な機関の何ら かの関与が必要と考えられる が、その程度については今後 の検討課題として残された。    2.骨髄移植に関する今後の方 針 ) 1 骨髄バンクに関する検討の ) 継続  「骨髄移植の評価に関する研 究」の報告書を受け、今後骨 髄バンクにつき、組織の検討 及び、円滑な管理・運営のた めの検討が必要と考えられる。   この検討については、今年 度研究事業のなかで実施する こととする。    [検討事項] @組織母体についての検討   組織母体設立の要件につき 検討するとともに、骨髄バン クの管理・運営に当たり公平 性、公共性、広域性を担保す るために、公的機関の関与に つき検討する。   なお、すでに民間において 骨髄バンク活動が開始されて いる現在、公的機関の具体的 な関与の方法については早急 に結論を出す必要があると考 えられる。 A組織の円滑な運営のための  検討   組織の円滑な運営に当たっ ては、以下の項目につき検討 し確立する。   ・ドナーの医学的、倫理的   適応基準及びインフォー   ムの内容   ・公平な骨髄のあっせんを   行うための患者の適応基   準   ・骨髄移植の治療成績に関   する評価の方法   ・その他 ) 2 骨髄移植に関する研究の ) 継続   骨髄移植については今後以 下の項目につき研究を推進す る予定である。   @白血病及び再生不良性貧   血における骨髄移植療法   の研究   A骨髄細胞の培養に関する   研究   B死体からの骨髄採取及び    保存に関する研究等  さる、5月14日、全国で集められた骨髄バンク早期実現要請の署名が集計され国会に提出されました。40万人分の署名用紙は、超党派で50人以上の国会議員に手渡されました。東海地方からは名古屋募る会の大谷代表、三重募る会の代表代理が参加、激励の言葉を戴いてきました。  厚生省としても検討を始め、 骨髄バンク早期実現の署名運動はここで大きく実を結んだ事になります。今後、新たな署名活動を展開していかなければならないと考えています。  さる、5月12、13日、東京で全国協議会準備委員会を開催、新組織、新体制に向けて着々と準備が進んでいます。  旧全国協議会は、骨髄バンク運動がまだ余り知られていないとき、名古屋募る会と協力して、各地に骨髄バンク運動を広めてきました。  この度厚生省も全国的な骨髄バンク設立の検討を始めたことにより、骨髄バンク運動を広めるという当初の目的を達成、今後は骨髄バンクの理想的な形態を、一緒になって考えていこうという目的のために体制を整えている次第です。  新全国協議会の目的である、今後骨髄バンクの在り方を検討していく段階で、一般の意見を統合していく必要性、各地の特異性をお互いに検討していく情報交換の必要性から、名古屋募る会としても、積極的に新全国協議会に参加していく事となりました。  新全国協議会は(何度もくどいようですが)、各地で行われている運動体の集合体で、みんなで骨髄バンクの在り方を検討していく団体です。  まだ、準備段階で正式な活動計画は発表されていませんが、近い内に新体制で設立される事となります。  詳しい内容は次号でお知らせできると思います。 編集後記  始めにお詫びを申し上げます。前号では、今回は最新の非血縁者間骨髄移植の成績を掲載するとお知らせいたしましたが、成分献血のご案内、骨髄バンクの記者会見、厚生省記者会見等、内容が盛りだくさんになり、紙面の都合上、次回に掲載する事といたしました。お許し下さい。  厚生省の報告書も発表され、骨髄移植が再発白血病や、重症再生不良性貧血では長期生存を期待し得る、最善の治療法であると断言し、骨髄移植の必要性を認めました。  そして、第三者からの骨髄採取は現時点としてはやむをえない治療法であるとし、骨髄バンクの必要性を認め、今後さらに検討していく事を約束していただけました。  全国的な骨髄バンクができれば、家族内に提供者が見つからなくても、再発白血病や重症再生不良性貧血では最善の治療法である骨髄移植を、その他の病気(急性白血病第一寛解期・慢性骨髄性白血病・等)では、化学療法あるいは骨髄移植の何れかを選べる事ができるようになり、現在患者さんが抱えている諸問題を一挙に解決して戴けるものと確信しております。  最終的に骨髄バンクができるまでにはまだまだ時間がかかると思いますが、慎重に検討し、かつ、できるだけ早期に国レベルでの骨髄バンクをつくり、一日でも早く、一人でも多くの患者さんを救って戴けるよう切望します。        北大路 元次郎