***************************************************************** *TUNORUKAIKAIHOU_TUNORUKAIKAIHOU_TUNORUKAIKAIHOU_TUNORUKAIKAIHOU* ***************************************************************** * * *  募る会会報 第3号                * * * *               昭和63年 9月 日発行 * * * *    発行 名古屋骨髄献血希望者を募る会 代表 大谷貴子 * *    編集                   北大路元次郎 * * * ***************************************************************** *TUNORUKAIKAIHOU_TUNORUKAIKAIHOU_TUNORUKAIKAIHOU_TUNORUKAIKAIHOU* *****************************************************************岐阜でも献血登録始まる。   2月から岐阜県内でもHLA検査用採血が出来るようになりました。三重県内でも準備が着実に進んでおり本格的になれば「名古屋骨髄献血・・・」を「東海骨髄献血・・・」と名称変更する予定です。岐阜県内の方にはおって詳しい内容を記載した封書をお送りいたします。 県議会でも骨髄バンク設立の要望    愛知県議会は、去る12月19日付けで「造血機能障害者対策の充実についての意見書」を内閣総理大臣、厚生大臣あてに提出しました。骨子は、以下のとうりです。           わが国では難治性である白血病、再生不良性貧血等でなくなるものが年間五千人を越えており、これらの疾患の根治治療法として骨髄移植が行われている。 しかしながら移植した骨髄生着のためには、患者と骨髄提供者のHLA(組織適合性)遺伝子の一致が必要であり、このHLA適合率をみると兄弟姉妹で1/4、一般の場合は1/5000の確立と言われている。そのため核家族化の進行などにより、患者が適合提供者を確保する事は非常に困難であり経済的負担もまた極めて大きいものがある。この窮状を救うには、広く国民のボランティア精神に基づく骨髄提供者登録制度(骨髄バンク)の設立に大きな期待がかけられているが未だ解決すべき多くの課題がある。  よって、政府におかれては、造血機能障害者及びその家族の救済に向け、自家骨髄移植など治療研究を一層推進するとともに骨髄バンク設立の検討など造血機能障害者対策の充実を図られるよう強く要望する。  以上、地方自治法第99条第2項の規定により意見書を提出する。             昭和63年12月19日  愛知県議会議長 長木 一 提出先 内閣総理大臣        厚生大臣       陳情先 衆議院議長         参議院議長         衆議院社会労働委員長    参議院社会労働委員長  地方行政が骨髄バンクにこの様な見解を示したのは初めてのことで、これから骨髄バンクの発展に大きな一歩を踏み出した事になります。これからも一層皆様のご理解、ご協力をお願いいたします  広島シンポジウム開かれる。 さる1月14日(土)、広島市社会福祉センターで第一回広島骨髄献血希望者を募る会シンポジウムが開催されました。   広島骨髄献血希望者を募る会は、昭和63年11月1日、白血病の患者である新居勉氏が代表となり、広島にも名古屋と同じような骨髄バンク設立を目的として結成されたもので、新居氏の勤務先である、西川ゴム株式会社の全面的なバックアップにより今日に至っています。代表の新居氏が現在入院中のため、世話人である甲斐氏の挨拶および甲斐氏による新居代表の挨拶文の朗読の後、広島赤十字病院内科部長土肥先生の骨髄移植に関する講演、全国「進める会」代表、橋本明子氏、名古屋「募る会」代表、大谷貴子氏、近畿「募る会」代表北川由美子氏の近況報告があり、最後に骨髄移植を受けたものの家族代表の体験談等があり熱気に満ちた会場で参加者の涙を誘っていました。 HLA採血に関するお願い  近々、葉書登録を済ませた方で、まだHLA検査に来ていない方にアンケート調査を致したいと思っています。ぜひご協力をお願いいたします。  今回は弁護士の串田正克氏にお願いしました。串田氏は法律家の立場からこの「募る会」を応援して下さることになりました。以下串田氏の手記です。                骨髄バンクの話を知ったのは、未だほんの三ケ月程度のことだった。東京のある弁護士から、不治の病とまで言われた白血病が骨髄移植により何とか治るようになって、そのために骨髄バンクを設立しようと名古屋では大谷さんが活動しているが、法的な問題で弁護士の援助があればとのことで名古屋の弁護士を探している、といわれたのが最初である。ともかく骨髄バンクについては全く知識がないため、どんどん送られてくる資料に目を通して状況を把握するのがやっとである。そしてまず驚いたことは、骨髄移植と言っても骨髄血の輸血の様なもので、移植を受ける患者にとってはなんでもない事であるが、骨髄血を採取することは大変なことで、それ故骨髄を提供して白血病で悩んでいる人々を救おうと思っても、全身麻酔を受け三日位入院という負担を強いられてしまう事であった。勿論医学的には骨髄採取は何でもない事の様である。そうは言ってもそれでも全身麻酔はこわい。ところがもっと驚いたことには、骨髄を提供して白血病で悩んでいる人々を救ってあげたいとかんがえている人が数多くいた事である。全身麻酔まで受け、三日位入院を強いられ、その上なんの対価も得られないというのにである。 本当に心の美しい人がいるものである。我々は、こうした折角の善意を無駄にしてはならないし、また白血病に悩む多くの患者に救いの手を差し伸べてあげなければならない。ここに骨髄バンク設立の意義がある。しかし問題も幾つかある。骨髄血採取に伴うリスクにどう対処すべきか。リスクを十分理解した上での自発的な善意をどのように確保すべきか。バンクに登録したがいざ骨髄血を採取しようとする段階になって拒否するに至った場合どうすべきか。バンクの運営管理等はどう行うべきか等々。こんなことを考えながら昭和63年11月23日第二回骨髄バンク名古屋シンポジウムに参加した。そこには骨髄バンクの設立を一日も早くと待ち望んでいる多くの人々、明日にでも命を失うかも知れないという白血病の患者をかかえた家族らの突き刺さるような熱い多くの視線があった。のんびりと構えてなんかいられない訳である。やはり早急に何とかしなければならない。法律家の性格なのかともすれば慎重になり過ぎてしまう為、この平成元年は大谷さんに相当せっつかれることを覚悟してバンク設立を目指して尽力する所存です。頑張りましょう。 医学シリーズ  今回の医学シリーズは、「骨髄移植ドナーの選択と骨髄採取」という表題で一九八八年7月30日に発行された「医学の歩み」146巻5号三五一頁掲載、  森島泰雄著の論文を紹介します。        骨髄移植は、難治性血液疾患の根治療法として確立し、兄弟間のHLA適合移植のみならず、最近では家族間のHLA不適合移植や、非血縁者からの骨髄移植も試みられている。骨髄移植は、他の臓器移植に比べ提供者(ドナー)の侵襲(リスク)が少ないのが特徴の一つであるが、骨髄提供は健康であるドナー本人の善意に基づいてなされるものであり、ドナーの安全性に最大限の配慮がなされなければならない。本稿では、具体的に骨髄提供までの手順、骨髄採取手技、骨髄提供による安全性、副作用についてのべ、骨髄提供、骨髄採取に際しての参考資料としたい。           《ドナーの検索》      移植の適応になると予想される患者とその家族はできるだけ早期にHLAの検査を実施して、家族内にHLA適合ドナーがいるかどうかを調べなければならない。これはドナーの有無により、患者の治療内容が異なる場合があるからである。そして、成人急性白血病では完全寛解導入早期に、慢性骨髄性白血病では慢性期に移植を実施することが望ましい。重症再生不良性貧血の場合には特に移植を急ぐことが多く、緊急のHLA検査が必要となる。HLA検査は、両親も含めたHLA|A,B,DR型検査をし、各人のHLA遺伝子型を決定することが望ましい。なぜなら、兄弟間のHLA遺伝子座の有無だけでなく両親、兄弟間のHLA表現型一致の有無、HLA不適合移植の可能性をしることができるからで、ちなみにHLA表現型一致ドナーは患者の約9%に認められる1)。ドナーと患者間ではさらにリンパ球混合試験(mixed lymphocyte culture:MLC)を実施してHLA|D領域の適合性を確認する。 《ドナーの同意と事前検査》  患者が骨髄移植の適応になり、HLAの適合したドナー候補が見いだされた場合、ドナーとその関係者に骨髄移植の意義、骨髄採取、その安全性と危険性につき説明し、十分な理解と同意を得なければならない。特に、非血縁者間移植ではこの点が重要になる 2)〜4)。同意が得られたら、骨髄採取のための健康診断を実施する。検診項目は @問診   A理学検査   B血球検査 C凝固検査   D血液型  E生化学検査  F免疫グロブリン検査    Gウィルス抗原・抗体検査  (HBV,HTLV|1,HIV, CMVなど)、梅毒検査  H検尿   I胸部X線検査 J心電図  K肺機能検査  L骨髄穿刺検査       Mそのほか@〜 Lより必要と思われる検査 を実施し、ドナーが麻酔と骨髄採取に関し、適切な健康状態であることを確認する。     また、骨髄採取時の輸血は輸血による副作用防止のため自己血輸血を原則としており、筆者らは骨髄採取予定日の2週間前までは血液センターで四〇〇mlの凍結赤血球保存を、2週間以内では院内採血し液状保存している。ドナーの年齢はSeattleの報告5)では、ドナー一一六〇人中10歳以下が一二八人内2歳以下が生後6ケ月例を再年少として4人、60歳以上が14人いるが、特に年齢が骨髄採取の障害にはなっていない。(編者注、このデータは殆どのドナーが家族内であるためで非血縁者からの移植とは異なる。) 《骨髄採取》         骨髄移植前治療が開始されると、ドナーの骨髄はかならず移植されなけらばならない。このため治療直前にドナーにトラブルが生じていないことを確認する。ドナーは骨髄採取予定の1〜2日前に入院し、麻酔医の診察も受ける。         骨髄採取術は麻酔の安全性を考慮して、原則として全身麻酔下で実施する。骨髄採取は一般にThomasらの方法6)に準じて行われている。ここでは筆者らが成人に実施している方法を示す。 骨の中に存在する骨髄の採取は皮膚に切開を加えるのではなく、経皮的に骨髄穿刺針(直径2mm前後)と10ml注射器をもちいて腸骨、胸骨より骨髄液を吸引する。この手技は患者に行う骨髄検査と同様である。最初腹臥位(脊椎を圧迫しないように腹部に枕をかう)で後腸骨より両側で60か所以上穿刺するが、骨の厚い所では浅部で1回吸引し、さらに針を進め深部でもう1回吸引する。1回の吸引で2〜3ml、最大5mlの骨髄液を注射器で急速に採取する。これ以上の良の吸引は末血の混入率が高くなる。通常骨髄有核細胞濃度は三万/cmm前後のことが多い。骨髄液が凝血しないように10ml吸引注射器内にあらかじめ0.5ml程度のヘパリン加メディウム(メディウム百mlあたりヘパリン四千単位)を入れておき吸引した骨髄液はヘパリン加メディウムを10ml程度入れたステンレスビーカーに集める。穿刺ぎの骨髄穿刺針は、別のビーカーに入れたヘパリン加メディウムで洗って使用する。骨髄液が二百〜三百ml集まったところで、注射器(50ml又は20ml)に接続した金属性メッシュ(〇.三〇七mm開口経)に通し、骨片等を取除く。このさいメッシュに付着した凝集塊は、メッシュをメディウムに付けて注射器のシリンジを上下させることでほぐれ、除去される。さらに瀘過された骨髄液はさらに細かいメッシュ(〇.二〇一mm)を通し、細胞をほぐした後、輸血用バッグに移す。この時に骨髄有核細胞数の算定をする。採取量が不十分な時は、腸骨からに列に約20ヵ所から採取するが、胸骨からの採取量は、成人では20億個前後のことが多い。採取骨髄細胞は末梢血混入による白血球数を差引いて算定するが、通常3億個/kg(患者体重)以上を目標にし、少なくとも2億個/kgは、採取したい。健常成人の体重当たりの骨髄有核細胞数は、百八十億個とされており、採取骨髄量は、全体の2%以下であり、骨髄採取による骨髄細胞形成不全の危険性はない2)。したがって、骨髄採取時に同時に採血される末梢血液量につき考慮すれば良い。通常採血量は、成人で三百〜千mlであり、採血量が四百mlを越えれば自己保存血を輸血する。やむをえず他家血を輸血する場合には、解凍赤血球を用いている。Seattleの報告5)では、体重当たりの採取骨髄細胞数と骨髄液量は、年齢、採取回数により大差はない。(表1、略)また、採取術後、10%のドナーに一過性の38.2℃以上の発熱を生じており、全例が、骨髄穿刺部位の疼痛を訴えるが次第に軽快し、ドナーは骨髄採取の翌日又は、翌翌日に退院する。次に骨髄採取に必要な器具と薬品を示す。(図1、略) 1)骨髄穿刺針        大(腸骨用)5〜10本  小 (勝沼式、胸骨用)5〜10本2)ステンレス製ビーカー   (五百ml) 4〜6個 3)ビーカー受け台・・2〜3個4)金属メッシュ(〇.三〇七mm と〇.二〇一mm)各3〜5個と接 続50mlまたは20ml注射器(先 端を切断したもの)    5)ディスポ注射器 (10ml10本 骨髄穿刺針に接続、 50ml1本 骨髄液を採血バッ グに移す時に使用)    6)輸血用バッグ(凝固剤の入 っていないもの)     7)培養メディウム・・・TC 199 二百ml  2〜3本、 又はRPMI1640(hepes-)  二百ml2〜3本(五百ml1本)8)ヘパリンナトリ ウム一万単位(防 腐剤なしのもの) 《採取骨髄の患者への移植》  輸血バッグに入った採取骨髄液は、直ちに患者に輸血と同様に点滴静注される。点滴ラインはあらかじめ輸血セットを用いて確保しておきIVHラインはつまりやすくなるので出来るだけ避ける。又骨髄液量が多いので補液負荷にならないように2〜4時間かけて点滴静注する。骨髄液には脂肪が多く、急速に投与すると一過性の肺塞栓を生じるといわれており注意を要する。また輸注時、顆粒球輸血と同様の機序と思われる一過性の発熱が生じる症例も認められる。 《採取骨髄の処理》  majorなABO血液型不適合移植(A↓Oなど)では骨髄液中の赤血球を除去した後、移植する。赤血球除去方法はFicoll-Hypaque分離法により骨髄単核球細胞を分離する方法や、デキストランを用いた赤血球沈降法などがある。なお、患者の抗A抗B抗体価を低下させる方法は患者に負担がかかり、また抗A抗B抗体は多能性骨髄幹細胞に反応しないことから一般的な方法ではない。minorなABO血液型不適合移植(O↓Aなど)では、血漿を遠心分離で除去するか、または抗A抗B抗体価が高値でない場合には無処理で移植するが、患者のハプトグロビンの測定、ハプトグロビンの投与など溶血対策を必要とする場合がある。  同種骨髄移植では移植片宿主病(GVHD)予防の為に、移植中よりT細胞を試験管内で除去する方法が試みられている。詳細は、省略するが、骨髄単核細胞に分離後、T細胞に向けられたモノクローナル抗体と補体による処理法、またはEロゼット法とクレチン凝集法などを用いてT細胞を除去した後移植されている。 《骨髄採取によるドナーの合併症》 国際骨髄移植登録(IBMTR)8)とSeattleの骨髄移植チーム5)は、合わせて4620例のドナーに実施した4826回の骨髄採取に関連した合併症につき報告している 9)。おもな合併症は13回(〇.27%)、すなわち約三百回採取に1回と、低率ではあるが生じている。この内訳を表2に示すが、骨髄採取そのものによる副作用は3回(〇.1%)あり、穿刺部位の炎症や敗血症で、全例抗生物質投与で軽快している。麻酔に関連したと思われる副作用は10回あったが、全例完全に回復したと報告されている。名古屋骨髄移植グループも上記の採取法により二五〇例以上実施しているが、重篤な副作用は生じていない。 以上記したように骨髄採取は安全な方法であるが、その合併症をできるだけ防止すべく、ドナーの検診、輸血、採取手技、麻酔法などに最大限の配慮がなされなければならない。 1)森島泰雄.他 日本輸血学会雑誌.32:五六五, 一九八六 2)森島泰雄:今日の移植(印刷中)    3)McElligott,M.C.et al.:Transfusion.26 :三〇九、一九八六 4)McCullough,J.:Transfuiso22:78,一九八二 5)Buckner,C.D.et al.:Blood.64:六三〇,一九八四 6)Thomas,E.D.and Storb,R.:Blood.36:五〇七,一九七〇 7)森島泰雄:癌と化学療法.15:一六九三,一九八八 8)IBMTR and SMTT: Exp.Hematol.11:九一六,一九八三 9)Bortin,M.M.:Report from NIH Technolo gy assessment Meeting.一九八五,p49