***************************************************************** *TUNORUKAIKAIHOU_TUNORUKAIKAIHOU_TUNORUKAIKAIHOU_TUNORUKAIKAIHOU* ***************************************************************** * * *  募る会会報 第3号                * * * *               昭和63年 9月 日発行 * * * *    発行 名古屋骨髄献血希望者を募る会 代表 大谷貴子 * *    編集                   北大路元次郎 * * * ***************************************************************** *TUNORUKAIKAIHOU_TUNORUKAIKAIHOU_TUNORUKAIKAIHOU_TUNORUKAIKAIHOU* ***************************************************************** 第2回骨髄バンク名古屋シンポジウム開催のお知らせ  昭和63年11月23日(水)、午後3時から5時まで名古屋大学医 学部内病院内鶴友会館二階大会議室で第2回、骨髄バンク名古屋シンポ ジウムを開催します。 アメリカのUCLA.のGale博士を招き、 アメリカの骨髄バンクの現状と骨髄移植の成績等の講演、また弁護士を 招き、骨髄バンクに於ける法律上の問題点などの講演を予定しています。 英語の通訳付きですので、 Gale博士への会場からの質問も受け付 けます。        第一回全国骨髄バンク設立連絡協議会(仮称)開催  第2回骨髄バンク名古屋シンポジウムの開催先立ち、第一回全国骨髄 バンク設立連絡協議会(仮称)が、ここ名古屋にて開催されます。全国 各地で、骨髄バンク設立に向け、さまざまに活躍している人、またこれ から現地で行動しようとしている人たちに呼掛け、一堂に会し、各地の 問題点、今後の活動の方向等話し合われる予定です(内容未定)。詳し くは、次回会報にて報告いたします。  前回、紙面の都合上掲載出来なかったためここにお知らせします。 名古屋シンポジウムアンケート結果 (出席者 一般194、報道11、医療関係者30) 1、本日の名古屋シンポジウムをどの様にしてお知りになりましたか  案内状 30 テレビ 11 ラジオ 2 新聞(中日 41 読売 3 )  その他 10 (病院2 姉1 友人3 その他4) 2 すでに骨髄提供登録をしていますか?    している 37   していない 53 3 2で「していない」と答えた方に   今後登録をされる意思がありますか    はい 36   いいえ 0   わからない 19 4 今の骨髄バンク運動について一言 # 全国的に活動が広がるように望みます。 # 私の息子は弟から移植を受けることができましたが、     親兄弟の方と合わなかった皆さんの為に是非頑張って下さい。    # 骨髄移植について一人でも多く詳しく知ことができたらいい。    # 現在友人が骨髄性白血病にて早急なる会の拡充発展を望む。    # マスコミに訴え、理解してもらうのが最も大切だと思います。    # 多々様々な不安や質問が登録するにあたってある人が多いと     思います。定期的にアンケートを取り、その質問に対する答え     等を会報等により知らせられるよう にしていただきたい。    # 血液の病気だけでなく小児癌などにも利き、兄弟間移植で良く     なっていると聞いています。いろんな会と手をつなぎ、大きく     なってほしいと思います。    # 一人でも多くの人が助かってほしい。    # 一人でも多くの人を助けてあげたい。    # 全国のネットワークできることを願う。静岡でも支部ができる     よう努力します。 5 名古屋シンポに参加しての感想    # 多少不安があったが、先生方のお話で健康を分かち合い協力で     きることを嬉しく思う。    # 骨髄・骨髄移植に関する簡単な案内書があれば提供者に同意が     取れそう    # 骨髄バンクの必要性をなお一層痛感いたしましたが、現に骨髄     移植を受けた患者さんよりその結果を広く知らすことが大切で     はないかと思います。    # 患者の父親として非常に勇気がわくと共に、正しい知識が得ら     れ感謝しております。また、先生方の熱意に感銘を受けました。    # 今日出席された方の多く は自分のまわりに患者さん があり、身近に感じている 方が多かったように思いま した。身近に感じなければ 自分からは動かないことが ほとんどだと思います。も っと学校や会社などへのP Rを行ったらどうでしょう か。 # わたしはまだ高校生なの で、卒業したら登録します。 皆さん頑張って下さい。 # 看護学生ですが、学校の 合間をぬってボランティア をしたいです。 # 先生始め皆様のご努力感 謝いたします。質問いたし 静岡の方々集まり住所交換 し、私どもで出来ること一 歩づつでもきづいていきま すこと誓い合いました。 # 患者さん・家族の生の声 が聞こえて良かった。  来る11月21日、近畿骨髄献血希望者を募る会が、大阪市内に事務所を開くことになりました。実際のHLA検査は準備の都合上、来春になる予定ですが、希望者の募集は開始するそうです。詳しくは、06(723)4990(11月21日以降) 〒577 東大阪市中小坂  3の5の12       近畿骨髄献血希望者を募る会  京都シンポジ ウム開催  去る10月22日(土)午後6時30分より9時まで京都府立勤労会館に於て、「京都骨髄バンクの早期実現を進める会」による京都シンポジウムが開催されました。提供者や患者家族ら、約140名が参加し大盛況でした。 京都大学医学部小児科医師秋山祐一先生が、スライドを用いて白血病とその治療法、骨髄移植の有効性を説明されました。兵庫医大輸血部助教授、原宏先生の「骨髄バンクとは」の講演のあと、自らドナープールを持っている関係上、一人でも多くの骨髄提供を呼かけられました。次に患者家族を代表して、大阪府堺市の藤村氏が患者の気持ち、親の気持ちを切々と訴えられました。藤村氏の長男(26才)は慢性骨髄性白血病と診断されてからまだ日も浅いのですが、患者自身が病名を知っているので「家族全員で一丸となって病気に立ち向かえる。父親としてできる限りバンク活動を行ないたい。」と力強く発言されました。関西の弁護士は憲法を引用され、「人は何人も健康に生きる権利がある。」と述べたあと、法律的に骨髄バンク設立が違法でないかどうか現在検討中であると締めくくられました。 名古屋、募る会・大谷貴子代表から、自身の経験と募る会の提供者登録状況が報告されたあと、東京、進める会・橋本明子代表が、今までの活動報告をし、最後に、厚生省へのアピール文が全員の拍手で採択され幕を閉じました。(以下、アピール文全文) 骨髄バンクの早期実現を!  10月22日 京都シンポジウム アピール 私達は知りました 白血病は不治の病でないことを!私達は知りました 骨髄輸血(移植)は万能ではないが非常に有効であることを 私達は知りました 日本では、骨髄提供者がないために、多くの命が救えていない現実を! 私達は知りました 英米では、骨髄バンクが稼働し多くの命を救いつつある現実を! 私達は確信します 我が国に、連帯感に燃えた非血縁骨髄提供者が数万人いることを! 私達は願っています 骨髄輸血(移植)適応の全ての患者が等しく、骨髄輸血(移植)に挑戦するチャンスに恵まれることを! 厚生省殿。私達は訴えます 骨髄ドナーバンクを早急に作って下さい! 私達は訴えます 骨髄ドナー検索のための費用を国で負担できるよう努力して下さい。 私達は訴えます 骨髄輸血(移植)についての啓蒙活動に取り組んで下さい。 1988年10月22日  骨髄バンクの早期実現を!     京都シンポジウム 参加者一同              関西地方では当日のシンポジウムの内容が、新聞やテレビで報道されたので11月21日の近畿骨髄献血希望者を募る会発足にむけて益々拍車がかかりそうです。  募る会、進める会 両代表 広島へ 去る11月8日、大谷貴子・名古屋骨髄献血希望者を募る会代表と、橋本明子・全国骨髄バンク早期実現を進める会代表は、広島にいき、第2回会報でお知らせした新居勉(にいつとむ)氏に会ってきました。新居氏は、いま慢性骨髄性白血病の急性転化を起こし、無菌室内で点滴を受けながら、ワープロを持込み広島のバンク作りに意欲を燃やしておられました。 広島での甲斐氏、事務局長の小松氏、中国新聞の記者らと会い、広島でのバンク作りに益々大きな自信を持ちました。また、翌日、岡山にて患者の家族の方と会い、代表に「岡山でもバンク活動を始めたい」という、強い希望を述べていました。以下、新居氏の手記を掲載します。(原文どおり) 新居 勉氏の手記全文 ★発病  私は広島に住む38歳の会社員です。30歳の妻と小学校1年生の男の子が一人います。昭和61年4月仕事をしている時に調子が悪くなり、近くの産業医にいったところ、胃かいようと診断されました。それまで多少無理をしていたこともあり、胃かいようで良かったと胸をなでおろしたのです。一応胃かいようの治療をしましたが、左のわきばらのところがまだ痛いこともあって引続き検査をすることとなりました。超音波検査の結果“ひ臓”が腫れているとのこと。私は非常にいやな予感がその時しました。ひ臓が腫れていることでろくな病気はないからです。会社に帰って書物を調べました。血の気がひいていくのが自分でもわかりました。血液疾患の疑いが濃いとあったからです。そして一般血液検査で医師から白血球が少し増えているから、精密検査が必要だ。ここではできないので病院を紹介するとの事でした。私はその時医師に“白血病ですか?”と尋ねましたがその時医師の返事はこうでした。“まあ検査をしてみないとわかりませんが、多分そうでしょう。”その時8割方私の病気は確定しました。 ★告知  その夜私は意を決して子供が寝静まってから妻にこのことを話しました。結婚5年半目のことでした。妻は泣きくずれ、寝ている息子のところにいって、息子をだきしめて泣いていました。私は一家の長としての責任を果せず結婚したこと、子供を生んだこと、全て後悔しました。それというのも私は小さい時から家庭環境に恵まれず、両親が離婚し、そのために自分の家庭だけはよい家庭をつくろうと考えてきたからです。それが健康という最も大切なものが失われ、妻や子供の将来を考えたとき、なんのために生きてきたのだろうと後悔したからです。そして広島日赤に行ったその日の夜主治医から正式に慢性骨髄性白血病と電話があり私の病気は確定しました。 ★抵抗  それからというもの、私は白血病にはよいというものをかたっぱしから試しました。妻のそれからの献身的な努力は忘れることはできません。もちろんこの病気には骨髄移植しかない事はわかっていましたので、妹とHLAの検査をしました。しかし50%しか合致していなく、兄弟姉妹からの骨髄移植が無理であることを知りました。知人で5万円をだしてHLAの検査をしてくれた人も10人ぐらいいましたが、結果は駄目でした。そこで骨髄バンクなるものをつくろうといろいろ動いてみましたが、結局主治医が乗り気にならず、その時はボシャとなりました。幸いその当時は慢性期でしたから入院もなく普通と同じように働いて薬も飲まないほど調子がよかったものですから、少し本気でなかったかもわかりません。 ★大谷代表、橋本代表との出会い  そうこうしているうちに、新聞等でバンク設立の動きがあることを知りました。手紙をだして状況をお聞きしているうちに全国的なバンク設立に発展しそうな状況であること。また同じような病気でバンクさえあれば、助かる可能性のある人が大勢いることをしりました。そして広島でもだれかが、バンク設立の動きをしなければいけないと痛切に思うようになりました。 ★広島でのバンク設立  大谷代表から読売新聞とこちらの大手である中国新聞の記者を紹介いただき早速取材が始まりました。そして私の入院中に記事は掲載されいろいろな反響を呼びました。(私は慢性期から5月に急性転化し入院中であったのです。)会社の方、町内会の方、そして息子のいっている学校の先生など署名や協力を申出る人もあらわれ、また日赤の内科部長も積極的でようやく設立のみとうしがたってきました。現在設立のためのいろいろな準備をしています。私は既に急性期にはいり移植がむずかしい時期にあり私の移植には間に合わないかもわかりませんが、同じ病気で頑張っている人のためにも頑張りたいと思います。一日も早く、このようなバンクが各地で設立され骨髄移植さえできれば、可能性のある人を救済できればと思います。どうか全国で先陣をきって設立された『名古屋骨髄献血希望者を募る会』がますます発展し、この運動が全国に広がることを念じております。        新居 勉  今回から、各面の専門家に骨髄バンクの現在の問題点、今後の方向につきコメントを戴くことになりました。始めに、名古屋骨髄移植グループの代表世話人、名古屋第一赤十字病院内科部長、小寺良尚先生に、骨髄移植に関するイントロダクションをお願いし、昭和60年7月に発行された「現代医学」33巻1号、9ペ−ジ掲載の文献を紹介して戴きました。部分的に紹介します。内容は一般医師向けにかかれたものですが、専門的な部分は省略してあります。数年前に書かれたものでデータ、内容等現在の最先端の医学とは異なることをご理解下さい。また単に成績といっても単純に比較出来るものではありませんので、その点を充分承知してください。また、紙面の都合上、全文を掲載する事が出来ず一部内容を変更しました。小寺先生の了解済みです。 (Xの成績の部分は1988年3月31日発行の図説臨床[癌]シリーズ  no.21 骨髄移植[末舛恵一、正岡 徹専門編集委員]小寺先生執筆のP74、P75掲載の名古屋骨髄移植グループの資料によった)  (編集局)              小寺良尚 内容紹介         骨髄移植(BMT)は重症免疫不全症、再生不良性貧血等もともと骨髄機能が欠損低下している患者および、白血病やリンパ腫に於て悪性腫瘍細胞を根絶するための超大量化学放射線療法の結果、骨髄も廃疾に至らざるを得ない患者を救う治療法である。骨髄提供者は通常、ヒト主要組織適合抗原が患者と一致した同胞であり、千億以上の骨髄有核細胞をあらかじめ拒絶反応を起こさぬよう前処置された患者に静脈点滴する。移植骨髄細胞が生着し機能を現わすまでにほぼ1カ月かかるが、その間患者は無菌環境にて管理される。移植片対宿主病(GvH|D)等の合併症は依然脅威であるが、手技の改良、新剤の開発はそれを克服しつつある。再生臓器であり従って供与者に負担の少ない骨髄移植は難治血液疾患や癌の根治療法の可能性を秘めて今後さらに普及するものと思われる。                   T.原理  骨髄造血組織の機能がもともと欠損しているかまたはなんらかの理由で廃疾した患者に同種(健康な同胞等)の、または廃疾前に採取保存しておいた自己の血液幹細胞を含む骨髄細胞を輸注することにより、致死的疾病の完全治癒を図るものである。              U.歴史   一九三九年、Osgoodが再生不良性貧血の患者に同種骨髄移植を試みたのが最も古い報告である。一九五〇年代に入り動物に於る実験的骨髄移植が研究されるようになったが、臨床的には一九五七年 Matheが致死量の放射線を被曝した6人の科学者を骨髄移植によって救命したことを報告して以来各国で急速に実施されるようになった。だが、移植の可否を支配する遺伝学上の知見の無かった当時なので、これらの試みは大部分が生着すら得られず悲惨な結果に終り,一九六〇年代後半には一時ほとんど移植は行われなくなった 1)。しかしこうした動きとは別に Amos、 Dausset、van Rood、Terasaki等によってヒト主要組織適合抗原(HLA)の発見と解析が進み、諸種抗菌剤、成分輸血、無菌室等骨髄移植に必須である補助療法が開発されてくる中で、Seattleの Thomas等は再生不良性貧血ならびに通常の化学療法に難反応性の白血病を、患者とHLAが一致した同胞を提供者とした骨髄移植で長期生存せしめたことを報告し、2),3) 近代的骨髄移植の幕開けとなった。              V.適応  骨髄移植の適応疾患としては現在以下のものが考えられている。@ 重症複合免疫不全症、A 重症再生不良性貧血(骨髄有核細胞中、赤芽球系、顆粒球系を合わせたものが30%以下であり,かつ末梢顆粒球五〇〇/mm3、血小板数 三万/mm3,網状赤血球一万/mm3 以下のもの)、B 急性および慢性白血病(但し18才以下のnon-T、 non-B細胞型リンパ性白血病は除く)、C 悪性リンパ腫、D その他の癌で、超大量化学放射線療法により癌細胞が根絶出来る可能性のあるもの。このうち@、Aに関してはもともと骨髄機能が欠損低下している疾病故、自己骨髄移植は考えられず、行われるのは全て同種骨髄移植である。他方B、C、Dは患者の骨髄機能は存在するが、癌細胞を根絶するための化学放射線療法により骨髄機能も廃疾を余儀なくされるものであるから、治療前の自己骨髄を凍結保存し、強力な治療をした後もどしてやる自己骨髄移植が可能となる。白血病の場合は骨髄造血組織の癌であるから自己移植に際しては骨髄中に混在する白血病細胞を、同細胞に特異性を持つモノクローナル抗体と補体を用いて除去しておく必要があり 4) 従ってそうしたモノクローナル抗体に反応する白血病症例に限られる。               W.実際         @,骨髄提供者(Donor)の選択 骨髄移植には前項で述べた如く同種移植と自己移植とがあるが、実際には後者は限られた症例に於けるものであり、殊に血液疾患に於ては同種骨髄移植が大部分である。その際骨髄提供者は患者とHLAが一致した同胞、稀には親(または子)である。HLA(ヒト白血球抗原)は第6染色体短腕上の四つの座に在る相同遺伝子群によってつくられる蛋白であり、一人のHLAは例えば次のように表わされる、HLA|A24,26,Bw62,w44,C3,4,DR4,w13。このうちA,B,C,D(DR)はそれぞれの抗原を支配する遺伝子の座を意味し、数字はその座にある遺伝子ならびにその表現即ち抗原を意味する。 HLA|A24とA26はそれぞれこの人の父親および母親から由来したものでありB,C,D(DR)座の抗原についても同様である。二人の兄弟の間でHLAが一致する確率は1/4である。父親と母親の遺伝子の組合せの一方が同じであるという家族が時にある。その時子供は1/2の確率で親とHLAが一致する。こうしたHLAの表現型は多産婦の血清中に含まれる抗HLA抗体(多産婦は自分には持っていない夫のHLAに対して妊娠中に感作され抗HLA抗体が出来る)を多数用いることにより知ることが出来る(HLAタイピング)。HLAは現在ではA座抗原16種、B座32種、C座8種、D(DR)座10種があるとされている。以上血清学的にタイピング出来る4群の抗原の他に、患者と骨髄提供候補者から分離したリンパ球の混合培養(MLC試験)によりはじめて一致、不一致が判定できる抗原があり、それをHLA|D座抗原と呼ぶ(正確にはD座は複数の遺伝子座の集まりであり、従ってD座抗原群といわれるべきである。)リンパ球は異物と接触すると幼若化現象を起こすので、互いのリンパ球を混合培養し、幼若化現象が起これば不一致、起こらなければ一致しているわけである。D座抗原は12種あるとされている。現在では、患者のHLA|A、B、C、D(DR)座抗原の表現型と一致した表現型を持つものを提供者としている。各座の抗原の数と組合せからも概算できるように、同胞親子以外から提供者が見つかる確率は極めて低い。   A,患者の前処置 5) 7)  骨髄移植は患者の一般状態が良好なときに実施することが肝要である(例えば感染によると思われる有熱時に移植を行うことはほとんど禁忌である)。状態良好な時を身はからって移植日(Day 0)を決定したら、移植された骨髄が拒絶されることを防ぐため患者の免疫系を根絶すること、および悪性腫瘍の症例ではその腫瘍細胞を根絶することを兼ねた化学放射線療法、さらに患者の無菌化の二つからなる前処置をDay -10より開始しDay 0までに完了する。  B,水平層流式または垂直層 流式無菌室       透明なビニールテント(入室患者の閉塞、孤立感を防ぐため)の一方にHEPAフィルターを通して無菌化された空気を送り込むもので室内清浄度はNASA基準クラス100以下のものである。テント内には患者の日常生活品(本、TV等も含む)診察、処置器具が収納出来、それらを一括してホルマリン燻蒸したうえ使用する。医師、看護婦等は滅菌したガウン、帽子、マスクを着用、下足を替えて入室し、補液路は長くとって室外より操作する。無菌室の使用により外来菌による感染はほぼ完全に制禦できる。         V.成績         成人急性白血病79例、および慢性白血病13例の予後をKaplan-Meier法で図に示した。ALLとAMLにおける移植後の生存率には差はなく、第1寛解期に移植を施行された症例の75%、第二寛解期の症例では45%に長期生存が期待できる。慢性白血病では慢性期移植例に長期生存者がでている。               Y.移植後の問題点    移植後良好な臨床経過をとり、速かに社会復帰出来るものも幾例かあるが、まだ多くは骨髄移植に伴う特有の症状に悩まされる。以下主なものを慨説する。  @,移植片対宿主病       (GvH|D)  移植後骨髄の生着時期とほぼ一致して起こる急性GvH|Dと100日以上経てから発症する慢性GvH|Dとに分けられる。前者は移植骨髄有核細胞中20%を占める成熟リンパ球が患者組織とのHLA以外の遺伝的差異を識別しておこす免疫反応であり、後者は移植骨髄幹細胞から免疫担当細胞が分化する際、新たな宿主である患者を「自己」とするよう「教育」され損なったために起こる自己免疫現象であろうと推測される。 A,間質性肺炎(IP)  リンパ球の肺間質への浸潤とそれによる組織破壊を機序とするIPは、移植後患者の免疫システムが正常に統禦されるまで(1年以上かかると考えられている)のいかなる時期にも起こり得るが、殊に急性GvH|Dに続発し移植後の死因の大きな部分を占める。サイトメガロウィルスやカリニイ原虫を検出することが多い。最近いろいろな治療法が開発され、かつてはほとんど致死的であったIPも救命し得る症例が出てきた。 B,その他の合併症    単純ヘルペス、帯状疱疹、出血性膀胱炎、結核、粘膜真菌症等が挙げられる。  C,悪性腫瘍の再発    殊に白血病に於て、移植後再発をみることがある。白血病細胞根絶をめざした前処置が不十分であることを意味しており、最近ではそれに対するさまざまな試みがなされている。一方、先述のGvH|Dが、こうした白血病を防止するとの報告もあり、癌免疫の立場からも研究がなされつつある。        Z.将来に向けて @,現行の移植に伴う問題点の解決         患者の臨床状態の良好な時期を選んで最新の設備や薬剤を駆使しつつ移植を行うようになってから、その成功率は著しく向上してきているが、GvH|D、IPそして悪性腫瘍の再発は依然脅威である。 A,骨髄提供者のワクの拡大 骨髄移植の中でも主力を占める同種移植の提供者は先述の如くHLAの一致した同胞が主であり、患者がそうした提供者をもつ確率は1/4である。移植を必要とする患者の全てに移植を行い得るようにするには「HLAの適合した肉親」という提供者のワクをはずし拡大しなけらばならない。それには今の所、HLAの一部が不一致な同胞両親からも移植を行う方法と、HLAが一致した他人から移植を行う方法(あらかじめ多数の人のHLAタイプの情報を集積しておき、移植が必要な症例が発生したらその中より適合提供者を選ぶ骨髄バンク構想)とがある。前者はHLAが不一致でも他の遺伝的背景が近似した人を提供者とする考えであり、後者はHLAが一致すれば他の遺伝的背景は異なっていても可とする考えである。かつてHLAの知識が無かった頃の無作為的な骨髄移植の時代に逆行するかの感があるが、HLAの一致した移植の症例によって確立された手技やモノクローナル抗体の開発等が、こうした試みを再び可能としたのである。               1) Bortin,M.M.: A compendium of rep- orted human bone marrow transplants, Trans plantation,9:6,1970   2) Thomas,E.D. et al :One hundred patients with acuteleukemia treat- ed by chemotherapy,total body irr- adiation ,and allogenic marrowtra- nsplantation,Blood,49:4,1977. 3) Storb,R.et al.:Allogenic marrow grafting for treatment of aplastic amemia,Blood,43:2,1974 4) 森島泰雄、他:自己骨髄移植とモノ クロール抗体による白血病細胞除去、 血液と免疫 6:4,1984    5) 山田博豊、他:白血病における同種 骨髄移植14例の検討、日本血液学会雑 誌 45:6,1982 6) Yamada,K.et al.:Clinical use of bioclean rooms in Japan with speci- al references to medical isolators, Jpn. J. Clin. Oncol. 13,1933記 7) Kodera,Y.et al.:Sixteen adult pat ients with acute leukemia treated by chemotherapy, total body irradi- ation and allogenic marrow trans- plantation, Jpn. J. Clin. Oncvol. 14:(Suppl.1),1984 8) Gale, R. P.: Recent advances in bone marrow transplantation, UCLA symposia on molecular and cellular biology new series.7,1983 今後、皆様方のわからない点や、改善点等ありましたらお知らせ下さい。私達でわからないことは、専門家に答えて戴きます。また会報1号、2号のご希望の方はご連絡下さい。次回はアメリカにおける骨髄バンクの実際と、 (Dr.Galeの講演内容も含めて)その歴史について触れてみたいと思います。                     また会報送付の際、「募る会」の差出人名では都合の悪い方は、個人名で送るようにさせていただいています。今のままでお困りの方は、当方までお知らせください。(北)